吐出圧一定制御

読み仮名
としゅつあついっていせいぎょ
英語表記
Constant Discharge Pressure Control
目次

概要

吐出圧一定制御とは、ポンプの吐出側で測定した圧力を、あらかじめ設定した目標値に維持する制御方式である。主にポンプ加圧方式の配水施設などで使用され、需要量の変化に応じてポンプの運転状態を調整する。

一般に、吐出圧力の調整にはポンプの回転速度制御が利用されるが、台数制御などを組み合わせる場合もある。吐出圧一定制御では、圧力の測定値と設定値を比較し、その偏差を小さくするようにポンプ設備を制御する。

この方式は制御構成が比較的単純である一方、ポンプの吐出圧力を一定にしても、管路末端の圧力が一定になるとは限らない。適用にあたっては、管路の損失水頭や需要量の変動、配水区域の地形条件などを考慮する必要がある。

1.吐出圧一定制御の基本

1.1 制御の目的

ポンプ加圧方式の配水施設では、水道利用者の使用水量が変化すると、配水管路を流れる水量や損失水頭も変化する。

ポンプを一定の回転速度で運転している場合、需要量の増減に伴ってポンプの運転点が移動し、吐出圧力も変化する。このため、需要量に応じた運転制御を行わなければ、適切な配水圧力を維持できない場合がある。

吐出圧一定制御は、ポンプの吐出圧力を設定値に維持することで、配水系統へ供給する圧力を安定させる方式である。

例えば、需要量が増加して吐出圧力が低下した場合には、ポンプの回転速度を上げて圧力を回復させる。反対に、需要量が減少して吐出圧力が上昇した場合には、回転速度を下げて圧力を調整する。

ただし、ポンプには運転可能な回転速度や流量の範囲があるため、回転速度の変更だけでは設定圧力を維持できない場合もある。

1.2 吐出圧力の測定位置

吐出圧一定制御では、制御対象となる圧力をどこで測定するかが重要である。

複数台のポンプを並列運転する設備では、ポンプの共通吐出管などに圧力伝送器を設置し、その測定値を制御に使用する構成が考えられる。

各ポンプの吐出直後の圧力と、共通吐出管の圧力は、配管損失や弁類の状態などによって異なる場合がある。そのため、圧力測定点は、配管や弁類の配置を踏まえて選定する必要がある。

また、測定点と制御装置の間で圧力信号を正確に伝送できることも重要である。圧力伝送器の設置では、空気の滞留や振動などによる測定への影響にも注意する。

2.吐出圧一定制御の仕組み

2.1 圧力のフィードバック制御

吐出圧一定制御では、圧力伝送器で測定した吐出圧力を制御装置へ入力する。

制御装置では、測定した吐出圧力と設定値を比較し、その偏差に応じてポンプの運転状態を調整する。

例えば、インバータによる回転速度制御を採用する場合には、計装盤で圧力制御の演算を行い、その結果に応じた回転速度指令をインバータ盤へ送る。

インバータ盤では、指令に応じて電動機へ供給する交流電力の周波数などを調整し、ポンプの回転速度を変更する。

これによりポンプの運転点が変化し、吐出圧力が設定値に近づく。このように、測定値を制御へ戻して目標値との差を修正する方式をフィードバック制御という。

2.2 計装盤とインバータ盤の役割

吐出圧一定制御では、圧力の目標値を維持する機能と、ポンプの回転速度を変更する機能を区別する必要がある。

計装盤に圧力制御機能を設けた設備では、圧力伝送器からの測定信号を基に、制御装置が必要な回転速度指令を演算する。一方、インバータ盤は、その指令に従って電動機を駆動する。

ただし、圧力制御の演算機能をインバータに内蔵した構成もあり、計装盤とインバータ盤の機能分担は設備によって異なる。

また、タコジェネレータやエンコーダなどの回転速度検出器を設けた設備では、実回転速度の信号をインバータの速度制御や計装盤での運転監視に利用する場合がある。

ここで、圧力伝送器によるフィードバックは吐出圧力を目標値に維持するためのものであり、回転速度検出器によるフィードバックは電動機の回転速度を制御・監視するためのものである。

これらは制御対象と役割が異なり、すべての設備で実回転速度の検出器が必要になるわけではない。

ポンプ吐出側の圧力伝送器で測定した圧力と設定値を制御装置で比較し、インバータによる回転速度調整で吐出圧力を一定に保つフィードバック制御の構成図

3.吐出圧力と管路末端圧力の関係

3.1 流量の変化と損失水頭

配水管路では、水が流れる際に管壁との摩擦や弁類などによってエネルギーが失われる。この損失水頭は、管径や管路延長、流量などによって変化する。

一般に、同じ管路条件であれば、流量が増加すると損失水頭は大きくなり、流量が減少すると小さくなる。

吐出圧一定制御では、需要量が変化してもポンプの吐出圧力を設定値に維持する。しかし、吐出側から管路末端までの損失水頭が変化するため、末端側の圧力は必ずしも一定にならない。

例えば、同じ経路を流れる水量が増加した場合には、管路の損失水頭が大きくなる。このとき、吐出圧力が一定でも、末端側の圧力は低下する。

反対に、流量が減少すると損失水頭が小さくなるため、末端側の圧力が上昇する。

なお、実際の配水管網では需要地点ごとの水量や流量分布が変化するため、末端圧力はポンプ場からの総配水流量だけで決まるわけではない。

3.2 動水勾配線による考え方

管路の圧力を水頭として表す場合、圧力水頭と位置水頭の和を結んだ線を動水勾配線という。

ポンプの吐出側における圧力を一定に維持し、測定位置の標高が変わらない場合には、吐出側の動水勾配線の高さは一定となる。

一方、同じ管路を流れる水量が多い場合には損失水頭が大きくなるため、流下方向に向かう動水勾配線の低下量が大きくなる。

流量が少ない場合には損失水頭が小さくなり、動水勾配線の低下量も小さくなる。

例えば、管径が一定で、途中にポンプなどのエネルギーを加える設備がない単純な管路を考える。この場合、低流量時と高流量時の動水勾配線は吐出側で同じ高さから始まり、高流量時の方が大きく低下する。

したがって、吐出圧力が一定であっても、末端地点における圧力水頭は、高流量時と低流量時で異なる。

ポンプ吐出圧力を一定に維持した場合について、低流量時と高流量時の損失水頭と動水勾配線を比較し、末端圧力が変化することを示す図

3.3 吐出圧力とポンプ全揚程の違い

吐出圧一定制御では、圧力伝送器で測定した吐出側の圧力を一定に維持する。

一方、ポンプの全揚程は、ポンプの吐出側と吸込側の全水頭の差であり、吐出側の圧力水頭と同じものではない。

ポンプ全揚程=吐出側全水頭-吸込側全水頭

ここでいう全水頭には、圧力水頭、位置水頭、速度水頭が含まれる。

例えば、吸込水槽の水位が低下すると、ポンプの吸込側の水頭も低下する。このとき、吐出圧力を同じ値に維持するには、ポンプがより大きな全揚程を発生させる必要がある場合がある。

したがって、吐出圧力が一定であっても、ポンプの全揚程や回転速度が常に一定になるわけではない。

ポンプ性能や運転点を評価する際には、吐出圧力だけでなく、吸込側の水位や圧力、流量なども考慮する必要がある。

4.吐出圧一定制御の実現方法

4.1 回転速度制御

吐出圧一定制御では、インバータなどによってポンプの回転速度を調整する方法が用いられる。

回転速度を変更すると、ポンプのQ-H曲線が変化し、管路条件との関係によって運転点が移動する。これを利用して、吐出圧力を設定値に近づける。

回転速度制御は、連続的な圧力調整が可能であり、制御用弁で流量を絞る方法に比べて、不要な損失を低減できる場合がある。

ただし、ポンプには運転可能な回転速度や流量の範囲があるため、回転速度の変更だけでは需要量の全範囲に対応できない場合がある。

4.2 台数制御との組み合わせ

複数台のポンプを設置している施設では、回転速度制御と台数制御を組み合わせる場合がある。

需要量が増加し、現在の運転台数では設定圧力を維持できなくなる場合には、ポンプを増台する。反対に、需要量が減少して少ない運転台数でも設定圧力を維持できる場合には、減台する。

台数を切り替える際には、合成ポンプ性能曲線が変化するため、吐出圧力が一時的に変動することがある。

このため、台数切替の判定条件、切替時の回転速度、弁類の動作などを適切に設定し、圧力変動を抑える必要がある。

また、予備機を設置している設備では、通常の需要変動に対応する台数制御と、故障時に他号機へ切り替える制御を区別する。

4.3 制御用弁による圧力調整

圧力制御には、ポンプの回転速度を変更する方法のほか、制御用弁の開度を調整する方法もある。

この方式では、制御用弁による損失水頭を変化させ、弁の下流側で測定した圧力を設定値に近づける。

ただし、弁の下流側の圧力を一定に維持する制御は、ポンプ自体の吐出圧力を一定にする制御とは測定位置や制御対象が異なる。制御用弁を使用する場合には、圧力測定点と制御対象となる位置を明確にする必要がある。

また、弁の絞りによってエネルギー損失が発生するため、運転条件によっては回転速度制御に比べて効率が低下する。

弁の前後差圧や流量条件によってはキャビテーションなどが発生する場合もあるため、適切な弁の選定と運転範囲の確認が必要である。

5.適用条件と他の圧力制御方式との違い

5.1 吐出圧一定制御が適する条件

吐出圧一定制御は、ポンプの吐出側と圧力管理の対象地点との間で、流量による損失水頭の変化が比較的小さい系統に適している。

例えば、管路が比較的短く、需要量が変化しても末端側の圧力変動が小さい場合には、吐出圧力を一定に保つことで必要な水圧を確保しやすい。

一方、管路が長い場合や、需要量によって損失水頭が大きく変化する場合には、吐出圧力を一定にしても末端側の圧力変動が大きくなることがある。

このため、適用の判断では、管路の長さだけでなく、管径、流量、標高差、需要分布などを含めた水理条件を確認する必要がある。

5.2 推定末端圧一定制御との違い

吐出圧一定制御では、需要量が変化しても、吐出圧力の設定値を原則として一定に維持する。

一方、推定末端圧一定制御では、配水流量などから管路の損失水頭を推定し、代表末端地点で必要な圧力を確保できるように吐出圧力の設定値を変更する。

両方式の主な違いを次に示す。

比較項目吐出圧一定制御/推定末端圧一定制御
圧力設定値原則一定/流量などに応じて変更
制御の目的吐出側圧力の維持/代表末端圧力の確保
末端圧力管路損失に応じて変動/推定した損失水頭に基づいて変動の抑制を図る
適用条件管路損失の変動が比較的小さい系統/管路損失の変動が大きい系統
制御構成比較的単純/損失水頭の推定演算が必要

吐出圧一定制御では、最大需要時に必要な末端圧力を確保できるように設定値を決めると、低需要時に末端側の圧力が必要以上に高くなる場合がある。

これに対し、推定末端圧一定制御では、需要量の減少に応じて吐出圧力の設定値を下げることで、必要な水圧の確保と過大圧力の抑制を図る。

ただし、推定末端圧一定制御では管路の損失水頭を適切に推定する必要がある。管網条件や需要分布の変化などによって推定誤差が生じる場合もあるため、設備条件に応じた制御方式の選定が重要となる。

6.運転管理上の注意点

6.1 圧力設定値の決定

吐出圧一定制御では、圧力設定値の選定が重要である。

設定値が低すぎると、需要量の多い時間帯に管路末端で必要な圧力を確保できない場合がある。一方、設定値が高すぎると、低需要時に末端側で過大な圧力が発生するおそれがある。

このため、圧力設定値は、配水区域の地形、需要量の変動、管路の損失水頭、必要最低圧力、許容される最高圧力などを考慮して決定する。

また、実際の運転では、ポンプの能力や回転速度の上限などによって、設定圧力を維持できない場合がある。圧力設定値とともに、ポンプの運転可能範囲も確認する必要がある。

6.2 圧力伝送器の精度と異常時の対応

吐出圧一定制御では、圧力伝送器の測定値を基にポンプを制御するため、計器の精度や信頼性が重要となる。

圧力伝送器に誤差が生じると、実際の吐出圧力と制御装置が認識する圧力に差が生じる。また、測定信号の断線や異常値によって、誤った制御指令が出力されるおそれがある。

このため、圧力伝送器の点検・校正に加え、必要に応じて信号異常の検出、警報、制御方式の切替などを設ける。

計器の故障時にどのような運転状態へ移行するかは、施設の重要度や設備構成によって異なる。安全性と供給継続性の両面から、適切な異常時の対応を検討する必要がある。

また、制御用の圧力伝送器とは別に、異常な圧力上昇や低下を検出する保護機能を設ける場合もある。

6.3 制御応答と台数切替

吐出圧一定制御では、需要量の変化に応じてポンプの回転速度などを調整するため、制御の応答速度が重要となる。

応答を速くしすぎると、圧力の小さな変動に対して回転速度が頻繁に変化し、圧力が振動する場合がある。一方、応答が遅すぎると、急激な需要量の変化に十分対応できない場合がある。

このため、制御パラメータや回転速度の変更速度を適切に設定し、安定した圧力制御を行う必要がある。

また、台数制御を併用している場合には、増台・減台の直後に反対の切替が発生しないよう、判定値や保持時間などを適切に設定することが重要である。

6.4 低流量運転とポンプの保護

需要量が減少すると、吐出圧力を一定に維持するためにポンプの回転速度を下げる場合がある。

ただし、ポンプには安定して連続運転できる流量や回転速度の範囲があり、極端な低流量運転では、内部循環、水温上昇、振動などが問題となる場合がある。

このため、最低回転速度や最小流量、必要に応じたポンプ停止条件などを設定し、適切な運転範囲を確保する必要がある。

また、吸込水位の低下や吸込側の圧力低下によってキャビテーションが発生するおそれがあるため、吐出圧力だけでなく吸込側の運転条件も監視することが重要である。

6.5 急激な圧力変化と水撃作用

吐出圧一定制御であっても、ポンプの急停止や急激な需要量の変化に対して、管路内の圧力を常に一定に保てるわけではない。

特に、停電によるポンプ停止や複数台のポンプの同時停止などでは、流量が急変し、水撃作用によって異常な圧力上昇や圧力低下が発生する場合がある。

このため、必要に応じてポンプの始動・停止方法、回転速度の変更速度、逆止弁の閉鎖特性などを検討する。

吐出圧一定制御は通常運転時の圧力を調整する方式であり、停電時などの過渡的な圧力変動に対する水撃対策とは区別して考える必要がある。

関連用語

参考資料

  • 公益社団法人 日本水道協会『水道施設設計指針2024』
    • 第8編 8.2.6「ポンプ形式と運転点」
    • 第8編 8.2.7「ポンプの制御」
    • 第8編 8.2.8「ポンプ運転監視制御設備」
    • 第8編 8.15.20「ポンプ設備」
  • 東芝『水道用電気設備ハンドブック 第8編 電動力応用システム』
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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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