水圧管理

読み仮名
すいあつかんり
英語表記
Water Pressure Management
目次

概要

水圧管理は、水道・工業用水道の配水管路における水圧を適切な範囲に維持するため、配水施設の運転条件や圧力分布を監視・調整することである。需要者に必要な水圧を確保するとともに、過大圧力による漏水や管路・設備への負担を抑えることを目的とする。

配水管の水圧は、配水池の水位、地形の高低差、使用水量、管路の摩擦損失、ポンプの運転状態などによって変化する。そのため、水圧管理では、配水区域の特性を把握し、減圧弁やポンプなどの設備を適切に運用するとともに、圧力の監視と管網解析を組み合わせることが重要である。

1.水圧管理の基本

1.1 水圧管理の目的と適正水圧

水圧管理では、配水区域内の各地点に必要な水圧を確保しながら、過大な圧力が生じないようにする必要がある。水圧が不足すると、給水量の低下や高所への給水障害などが発生する一方、水圧が過大になると、漏水量の増加や管路・給水設備への負担につながる場合がある。

「水道施設の技術的基準を定める省令」第7条では、配水管から給水管に分岐する箇所について、最小動水圧を150kPa以上、最大静水圧を740kPa以下とすることが規定されている。ただし、いずれも給水に支障がない場合には例外が認められる。

項目基準・考え方
最小動水圧150kPa(0.15MPa)以上。ただし、給水に支障がない場合を除く
最大静水圧740kPa(0.74MPa)以下。ただし、給水に支障がない場合を除く
適用位置配水管から給水管に分岐する箇所
管理上の考え方必要水圧の確保と過大圧力の抑制を両立させる

これらは配水管に関する技術的基準であり、各給水栓で必要となる水圧を直接示したものではない。実際の水圧管理では、給水方式や配水区域の標高差などを考慮し、施設ごとに適切な管理目標を設定する必要がある。

1.2 静水圧・動水圧と水頭の関係

静水圧は、管内の水が静止している状態で生じる圧力であり、自然流下方式では配水池の水面と管路の標高差などによって決まる。一方、動水圧は、管内を水が流れている状態での圧力を指し、流量、管路の損失水頭、ポンプによる加圧などの影響を受ける。

なお、ここでいう動水圧は、流速による動圧(ρv²/2)そのものを意味するものではない。

水圧は水頭に換算して表すことができ、圧力と圧力水頭には次の関係がある。

p=ρgh

  • p:圧力(Pa)
  • ρ:水の密度(kg/m³)
  • g:重力加速度(m/s²)
  • h:圧力水頭(m)

水頭10mは約0.098MPaに相当する。例えば、大気開放された配水池の水面と管路中心の標高差が30mあり、管内の水が静止している場合、その地点の圧力水頭は30mとなり、ゲージ圧は約0.294MPaとなる。

図に示す自然流下方式では、静止時の圧力水頭は配水池水面と管路中心の標高差に相当する。一方、通水時には管路の摩擦や弁などによる損失水頭が生じ、動水勾配線が下流に向かって低下するため、各地点の圧力水頭は静止時とは異なる。

高所の配水池から自然流下する管路について、静止時の静水頭線と通水時の動水勾配線、および各地点の圧力水頭を示す模式図

2.水圧が変動する要因

2.1 使用水量と管路損失

配水管の水圧は、時間帯による使用水量の変化に応じて変動する。一般に、使用水量が増加すると管路の摩擦損失が大きくなり、配水池水位などの供給条件がほぼ一定であれば、下流側の同一地点における水圧は低下する傾向がある。

一方、使用水量が少ない時間帯には、管路の摩擦損失が小さくなるため、水圧が高くなる場合がある。ただし、実際の水圧は配水池水位やポンプの運転制御などにも左右されるため、使用水量だけで決まるものではない。

また、同じ配水区域内であっても、管路の延長、口径、管内面の状態、分岐状況などによって損失水頭が異なる。特に配水区域の末端や標高の高い地点では、使用水量が増加した際に必要水圧を確保できるか確認することが重要である。

一日の配水流量と水圧の相対的な変化を示し、流量が増加する時間帯に水圧が低下する傾向を表した模式グラフ

2.2 配水池水位とポンプ運転

自然流下方式では、配水池の水面標高が配水管の圧力を決める重要な条件となる。配水池水位が低下すると、他の条件が同じ場合には配水区域内の水圧も低下するため、運転水位の変化を考慮した管理が必要である。

ポンプ加圧方式では、ポンプの揚程や運転台数、回転速度などによって配水圧力が変化する。インバータ制御などを利用して吐出圧力を調整する場合には、需要量の変化に応じて適切に制御することで、水圧変動の抑制を図ることができる。

ただし、ポンプの吐出圧力を一定に保っても、配水区域内のすべての地点で水圧が一定になるわけではない。配水管の摩擦損失や各地点の標高差を考慮し、必要な地点で適正な水圧が確保されるように運転条件を設定する必要がある。

2.3 弁操作と急激な圧力変動

制水弁の開度を変更すると、管路の流量や損失水頭が変化し、上流側と下流側の水圧に影響する。そのため、大口径管路や需要量の大きい配水系統では、弁操作に伴う圧力変化に注意する必要がある。

特に、弁の急閉鎖やポンプの急停止などによって流速が短時間に変化すると、水撃作用が発生する場合がある。水撃作用は通常運転時の緩やかな水圧変動とは異なる過渡現象であり、急激な圧力上昇や圧力低下によって管路や設備に影響を及ぼすおそれがある。

水圧管理では、通常運転時の圧力範囲だけでなく、起動・停止や弁操作に伴う過渡的な圧力変動についても考慮する必要がある。

3.水圧管理の方法

3.1 配水区域の分割と圧力管理

配水区域内に大きな高低差がある場合、標高の低い地点では水圧が高くなり、標高の高い地点では水圧が低くなる傾向がある。このため、一つの配水区域で適正な水圧を確保することが難しい場合には、地形や需要分布に応じて配水区域を分割する方法が採用される。

配水区域を高区・低区などに分け、それぞれの区域に適した配水池水位やポンプ揚程、減圧条件を設定することで、過大圧力と水圧不足の両方を抑制しやすくなる。区域の分割に当たっては、平常時の配水能力だけでなく、事故時の相互融通やバックアップ系統なども考慮する必要がある。

3.2 減圧弁による圧力調整

減圧弁は、一次側から流入する水の圧力を下げ、二次側の圧力を設定値に保つように開度を自動調整する弁である。高低差の大きい配水区域や、高圧区域から低圧区域へ配水する場合などに使用される。

例えば、高所に設置した配水池から高区と低区に分けて配水する場合、低区側の管路に減圧弁を設置することで、過大圧力を抑制できる。一方、高区側では必要な水圧を確保する必要があるため、それぞれの区域に応じた圧力管理が重要となる。

ただし、減圧弁の二次側圧力が設定値に保たれていても、管路の摩擦損失や標高差によって配水区域内の圧力は変化する。そのため、減圧弁の一次側・二次側だけでなく、下流側の末端などでも水圧を確認する必要がある。

また、減圧弁が正常に作動するためには、必要な一次側圧力や作動差圧、流量条件を満たすことが重要である。設定圧力が低すぎると需要量の多い時間帯に水圧不足が生じる場合があるため、減圧効果と必要水圧の確保を両立させる必要がある。

配水池から高区へ直接配水し、低区では減圧弁によって水圧を調整するとともに、各区域の末端で圧力を確認する構成図

3.3 配水池・ポンプによる圧力制御

配水池は、需要量の時間変動を調整するとともに、自然流下方式における配水圧力の基準となる施設である。配水池の水位管理では、供給水圧だけでなく、必要な貯水容量や浄水場からの流入量なども考慮する必要がある。

ポンプ加圧方式では、圧力伝送器などの測定値を利用し、ポンプの回転速度や運転台数を調整することで配水圧力を制御する。需要量の増減に追従した運転を行うことにより、水圧の安定化と運転効率の改善を図ることができる。

ただし、急激な運転変更は圧力変動の原因となるため、制御応答やポンプの起動・停止条件を適切に設定する必要がある。また、停電や設備故障時に水圧を維持できるかについても検討することが重要である。

4.水圧管理と管網解析

4.1 配水区域内の圧力分布

配水区域内の水圧は、配水池やポンプの運転条件が同じであっても、各地点の標高や管路の損失水頭によって異なる。そのため、水圧管理では、特定の測定地点だけでなく、配水区域全体の圧力分布を把握する必要がある。

特に、標高の高い地点や配水管の末端では、需要量が増加した際の水圧不足に注意する。一方、標高の低い地点では、使用水量の少ない時間帯などに高水圧となる場合があるため、最大圧力についても確認する必要がある。

適正な水圧管理を行うためには、圧力不足や過大圧力が生じやすい地点を把握し、需要量や配水池水位などの運転条件を組み合わせて評価することが重要である。代表的には、需要量が多く配水池水位が低い場合の水圧不足や、需要量が少なく配水池水位が高い場合の高水圧を確認するとともに、静止時の最大静水圧も評価する。

4.2 管網解析と実測値の活用

管網解析は、管路の接続状況、管径、延長、需要量、配水池水位、ポンプの運転条件などを用いて、配水管網内の流量や圧力を計算する方法である。水圧管理では、配水区域内の圧力分布の把握や、減圧弁の設定変更、ポンプ運転条件の見直しなどに活用される。

管網解析によって、通常時だけでなく、需要量の増加時や一部の管路を停止した場合などの圧力分布を検討できる。ただし、解析結果は設定した需要量や管路条件などに依存するため、実際の圧力と一致するとは限らない。

解析の精度を高めるためには、圧力計や流量計による実測値と計算結果を照合し、需要量の配分や管路抵抗などの条件を必要に応じて見直すことが重要である。実測値と解析結果を組み合わせることで、水圧管理上の問題箇所や改善策を検討しやすくなる。

5.運転・維持管理

5.1 水圧の監視と異常の把握

水圧管理では、配水池の出口、ポンプの吐出側、減圧弁の一次側・二次側、配水区域の末端など、管理上重要な地点で圧力を監視する。圧力伝送器を使用すれば、圧力の連続記録や遠方監視が可能となり、時間帯による変動や異常の早期把握に役立つ。

水圧が通常より低下した場合には、需要量の増加、配水池水位の低下、ポンプの運転異常、管路の漏水などが原因として考えられる。一方、水圧の上昇は、需要量の減少や弁の閉鎖、ポンプの運転条件の変化などによって生じる場合がある。

ただし、水圧の変化だけで異常原因を特定することはできない。流量計の測定値や運転記録、周辺の圧力計の値などを照合するとともに、圧力計や圧力伝送器自体の異常についても確認する必要がある。

5.2 漏水・管路負荷と水圧管理

配水管や給水管に漏水箇所が存在する場合、一般に水圧が高くなると漏水量が増加する傾向がある。このため、必要水圧を確保したうえで過大圧力を抑制することは、漏水量の低減を図るための対策の一つとなる。

ただし、減圧による漏水量の低減効果は、漏水箇所の形状や管種、圧力条件などによって異なるため、一定の割合で減少するとは限らない。また、過度の減圧によって末端の水圧不足が発生しないよう注意する必要がある。

管路や継手には、通常の内圧に加え、運転条件による圧力変動や水撃作用などの負荷が作用する。長期的な維持管理では、管路の老朽化や漏水履歴なども考慮し、急激な圧力変動を抑える運転と適切な管路更新を組み合わせることが重要である。

6.水道・工業用水道における活用

6.1 上水道における水圧管理

上水道では、生活用水の使用状況によって時間帯ごとの需要量が変化するため、需要が多い時間帯にも必要な水圧を確保することが重要である。特に、地形の高低差が大きい配水区域や高所への給水が必要となる区域では、配水方式や給水条件に応じた管理が求められる。

また、使用水量の少ない時間帯には、配水区域の低い地点などで水圧が高くなる場合がある。このため、配水池水位、ポンプ運転、減圧弁などを適切に組み合わせ、需要の変動に対応した水圧管理を行う必要がある。

水圧管理は、安定給水を確保するだけでなく、漏水量の抑制や配水設備の効率的な運転にも関係する。区域全体の圧力分布と運転状況を継続的に把握し、管理方法を必要に応じて見直すことが重要である。

6.2 工業用水道における水圧管理

工業用水道では、受水事業所の操業状況によって使用水量が変化し、特定の事業所で短時間に大きな流量変動が生じる場合がある。このような流量変動は、共通する配水管路の損失水頭や圧力分布に影響するため、他の受水事業所の供給条件にも注意する必要がある。

工業用水道の水圧管理では、上水道とは異なる技術基準や供給条件を踏まえる必要がある。「工業用水道施設の技術的基準を定める省令」第7条では、配水管の内径について、最小動水圧が49kPaを超え、配水管末端の水圧ができるだけ均等になるよう算定することが規定されている。

これは配水管の管径算定に関する技術基準であり、各受水事業所への具体的な供給圧力は、それぞれの工業用水道事業の供給条件などに基づいて確認する必要がある。

また、自然流下方式では、浄水場や配水池から各受水事業所までの標高差と管路の損失水頭が供給圧力に影響する。特に大口需要者による急激な流量変更や弁操作は、配水系統全体の圧力変動につながる場合があるため、受水事業所との運用調整や流量・圧力の監視が重要である。

工業用水道では、施設の設計条件と需要者ごとの供給条件を踏まえ、必要な水量と水圧を安定的に確保することが基本となる。供給系統全体の流量変動を把握し、適切な設備運用と受水事業所との連携によって安定供給を図る必要がある。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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