配水方式

読み仮名
はいすいほうしき
英語表記
Water distribution method
目次

1.配水方式の基本

1.1 配水方式の役割

配水施設には、需要者が必要とする水量を、適切な水圧で安定して供給する役割がある。配水方式は、この目的を達成するために、水の持つ位置エネルギーやポンプによる加圧をどのように利用するかによって区分される。

配水区域には、標高の異なる住宅地や工業地域などが含まれる。地形や需要量によって必要な水圧条件が異なるため、区域全体の圧力分布を考慮した施設計画が必要である。

1.2 配水施設の構成

一般的な水道施設では、浄水場で処理した水を配水池などに送り、配水本管や配水支管を通じて需要者へ供給する。

配水池は、時間的な需要変動に対応するための貯留機能を持つほか、水位を利用して配水圧力を確保する役割も担う。地形条件などによっては、配水ポンプや加圧ポンプ所、減圧弁などを設置する。

なお、浄水場から配水池へ水を送る「送水」と、配水施設から需要者へ水を供給する「配水」は区別される。送水にポンプを使用していても、配水池から需要者へ自然流下で供給している場合、その配水系統は自然流下方式である。

2.主な配水方式

2.1 自然流下方式

自然流下方式は、配水池などの水位と配水区域との水頭差を利用して水を供給する方式である。配水に必要な水頭を確保できる地形条件では、配水ポンプを常時運転することなく供給できる。

自然流下方式では、配水池の水位が配水圧力を左右する重要な条件となる。ただし、配水池の水位と需要地点の標高差が、そのまま通水時の圧力になるわけではなく、管路の摩擦損失や局部損失を考慮する必要がある。

配水時のポンプ動力を抑えられることが利点である一方、配水池の設置標高や管路条件によって供給できる区域が制約される。また、自然流下で配水していても、配水池への送水設備や監視制御設備などは停電の影響を受ける場合がある。

2.2 ポンプ加圧方式

ポンプ加圧方式は、配水ポンプによって水にエネルギーを与え、必要な配水圧力を確保する方式である。配水池などの水位だけでは十分な圧力を確保できない区域や、地形上の制約がある場合に採用される。

ポンプの運転台数や回転速度などを制御することで、需要量の変化に対応した圧力管理が可能となる。一方、ポンプの運転に電力を必要とするため、運転費や設備の保守点検、停電時の対応を考慮する必要がある。

また、ポンプの起動・停止や急激な流量変化によって、管路内に圧力変動が生じることがある。設備の構成や制御方法によっては、水撃作用を抑制する対策も必要となる。

配水池の水位と標高差を利用する自然流下方式と、配水ポンプで加圧して需要者へ供給するポンプ加圧方式の比較図

自然流下方式とポンプ加圧方式の主な特徴は、次のとおりである。

比較項目自然流下方式/ポンプ加圧方式
圧力の確保配水池などの水位による水頭差/ポンプによる加圧
地形条件必要な水頭差を確保できる地形に適する/地形による制約を補いやすい
エネルギー消費配水時のポンプ動力を抑えられる/ポンプ運転に電力を要する
圧力調整水位や弁、区域設定などで調整/ポンプ制御などで調整
停電時の対応貯留水と水頭差による配水を継続できる場合がある/非常用電源などの対策が重要

2.3 併用方式

併用方式は、自然流下方式とポンプ加圧方式を、配水区域や運転条件に応じて組み合わせる方式である。

例えば、標高の低い区域には配水池から自然流下で供給し、高い区域には加圧ポンプ所を設けて供給する方法がある。また、通常時は自然流下で配水し、需要の増加などによって圧力が不足する場合にポンプで補助する構成も考えられる。

併用方式では、区域ごとの必要水圧に応じて設備を配置できる一方、ポンプの運転状態や区域間の圧力差によって流れが変化する場合がある。このため、配水区域の設定や弁の操作、制御方法を適切に計画する必要がある。

3.配水方式と水圧の関係

3.1 配水池の水位と配水圧力

配水池から自然流下で配水する場合、水が静止している状態では、配水池の水面と需要地点の標高差に応じた静水圧が生じる。配水池の水位が高いほど、同じ標高の地点における静水圧は大きくなる。

一方、実際に水が流れている状態では、管路内で損失水頭が生じるため、需要地点の圧力は静水時より低下する。特に、配水池から離れた地点や標高の高い地点では、必要な水圧を確保できるか確認することが重要である。

3.2 動水勾配と損失水頭

管路内を水が流れると、管壁との摩擦や弁・曲管などによってエネルギーが失われる。この損失を水頭で表したものが損失水頭であり、管路の流量、管径、延長、形状などによって変化する。

動水勾配線は、流動時の位置水頭と圧力水頭の和を示す線である。自然流下方式では、配水池の水面を起点として、管路の損失水頭や流速の変化などに応じてその高さが変化する。

管路の断面や流速がほぼ一定である単純な管路では、動水勾配線はおおむね損失水頭に応じて低下する。各地点における動水勾配線と管中心の高さの差が、その地点の圧力水頭に相当する。

一般に、流量が増加すると損失水頭も増加するため、同じ配水池水位であっても末端の圧力は低下する。このため、配水方式の検討では、計画上の最大需要時など、圧力が不足しやすい条件を考慮する必要がある。

なお、図では水頭の関係を理解しやすくするため、速度水頭や配水池出口の局部損失などを簡略化して示している。実際の水理計算では、これらの影響も考慮する必要がある。

配水池水位を起点とする静水頭線と動水勾配線、管路の損失水頭および需要地点の圧力水頭の関係を示す縦断模式図

3.3 配水区域の高低差と圧力管理

標高差の大きい配水区域では、低い地点で圧力が過大となり、高い地点で必要な圧力が不足する場合がある。このような区域では、地形や圧力条件に応じて配水区域を分割する方法が用いられる。

標高の高い区域には加圧ポンプ所や高所の配水池を設け、低い区域では減圧弁などによって過大な圧力を抑制する。区域分割により、それぞれの区域に適した圧力管理を行いやすくなる。

ただし、区域間の連絡管や弁の開閉状態によって、流量や圧力の分布が変化することがある。このため、通常時だけでなく、事故時や配水系統の切替時の水理条件も考慮する必要がある。

4.配水方式の選定

4.1 地形条件と配水区域の設定

配水方式の選定では、配水区域の地形、標高差、配水池の位置などを把握し、必要な水圧を確保できる施設配置を検討する。

高所に配水池を設置できる場合は、自然流下方式が有利となることがある。一方、標高差が小さい区域や高台を含む区域では、ポンプ加圧方式や併用方式が適する場合がある。

また、標高差の大きい区域を一つの配水系統で管理すると、地点によって圧力が過大または不足することがある。そのため、地形条件に応じて高区・低区などに分割し、必要に応じて減圧設備や加圧設備を配置する。

配水区域を高区・中区・低区に分割し、加圧ポンプ、自然流下、減圧弁を使い分けて水圧を管理する構成図

4.2 配水量・必要水圧・エネルギー消費

配水方式を選定する際には、計画配水量と必要水圧を満たすことが基本となる。特に、需要が集中する時間帯や配水池水位が低下した場合でも、必要な圧力を確保できるか検討する必要がある。

自然流下方式は配水時のポンプ動力を抑えられるが、高所への配水池の設置や送水にエネルギーを要する場合がある。一方、ポンプ加圧方式では、ポンプの効率や運転制御によってエネルギー消費が変化する。

したがって、方式の比較では配水時の消費電力だけでなく、施設の建設費、送水に必要なエネルギー、維持管理費などを含めて評価することが重要である。

4.3 災害対応・維持管理・将来需要

自然流下方式では、配水池に水が確保され、管路が健全であれば、停電時にも一定期間配水を継続できる場合がある。ただし、配水池への補給や監視制御設備が停止すると、継続的な供給に支障が生じる可能性がある。

ポンプ加圧方式では、停電時の供給を確保するため、非常用電源や予備ポンプなどの対策が重要となる。また、ポンプの故障や保守点検時にも必要な供給能力を確保できるよう、設備構成を検討する必要がある。

さらに、将来の人口変動や工業用水の需要変化によって、必要な配水量や圧力条件が変わる場合がある。配水方式の選定では、将来の需要変動に対応できる施設構成や運転方法も考慮する。

5.運転・維持管理

5.1 配水圧力と流量の監視

配水施設の運転管理では、配水池の水位、配水流量、管路内の圧力などを継続的に監視することが重要である。

自然流下方式では、配水池の水位変動や需要量の増減によって圧力が変化する。ポンプ加圧方式では、これらに加えてポンプの運転状態や制御設定が圧力に影響する。

圧力計や流量計などの測定値を組み合わせることで、通常時の圧力分布を把握するとともに、漏水や設備異常による変化を早期に発見しやすくなる。

5.2 ポンプ・弁の操作と圧力変動

配水ポンプの起動・停止や弁の開閉操作によって、管路内の流量と圧力が変化する。特に、急激な流速変化が生じると、水撃作用によって一時的に大きな圧力上昇や圧力低下が発生する場合がある。

このため、ポンプの起動・停止方法や弁の操作速度を適切に設定し、必要に応じて水撃作用を抑制する設備を設ける。また、配水区域を切り替える際には、区域間の圧力差や流れの方向を確認する必要がある。

5.3 事故・停電時の対応

管路事故や停電が発生した場合には、配水方式や施設構成によって供給への影響が異なる。

自然流下方式では、配水池の貯留水を利用して供給を継続できる場合があるが、配水池への補給が停止すると水位が低下する。ポンプ加圧方式では、非常用電源や代替配水系統などの確保が重要となる。

また、事故時には連絡管を利用して他の配水区域から応援給水を行うことも考えられる。ただし、通常とは異なる流れによって圧力不足や過大圧力が発生する可能性があるため、事前に水理条件を確認しておく必要がある。

6.水道・工業用水道における活用

6.1 上水道における配水方式

上水道では、住宅地や商業地域などに必要な水量と水圧を確保するため、地形条件や需要分布に応じた配水方式が採用される。

例えば、標高の高い場所に配水池を設け、周辺の住宅地へ自然流下で供給する方法がある。一方、高台の住宅地などでは、加圧ポンプ所や高所の配水池を利用して必要な水圧を確保する。

また、標高差の大きい市街地では、配水区域を分割し、低い区域の過大圧力を抑制することがある。適切な圧力管理は、給水の安定性だけでなく、漏水の抑制や管路への負荷軽減にもつながる。

6.2 工業用水道における配水方式

工業用水道では、工場などの需要者へ大量の水を安定して供給するため、配水方式と需要者の使用水量の変動を考慮した施設計画が重要となる。

例えば、高所にある浄水場や配水池から、標高の低い工業地域へ自然流下で配水する方式がある。この場合、供給源の水位と需要地点の標高差によって利用できる水頭が決まり、管路の損失水頭を考慮して需要者側の圧力を確保する。

工業用水道では、大口需要者の使用水量が短時間に変化することがある。特定の需要者が取水量を大きく増加させると、配水系統の流量分布や損失水頭が変化し、ほかの需要者の受水圧力に影響する場合がある。

また、需要者側の弁を急激に閉鎖すると、水撃作用による圧力変動が配水管路へ伝わる可能性がある。このため、需要者側の使用状況を把握するとともに、急激な流量変化を避けるための運用上の調整が重要となる。

工業用水道の安定供給には、配水施設側の圧力・流量管理だけでなく、需要者との連携も必要である。特に、大口需要者を含む配水系統では、通常時の運転条件に加えて、需要の急変や設備停止時の影響を考慮することが重要である。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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