- 読み仮名
- ひょうめんふかりつ
- 略称
- SOR
- 英語表記
- Surface overflow rate
1.概要
表面負荷率とは、沈殿池の単位水面積当たりに、単位時間で処理する水量を表す指標である。沈殿池の処理能力や必要な水面積を検討する際に用いられ、沈降する粒子を池内でどの程度除去できるかを考える基本となる。
独立した粒子が一定の速度で沈降する理想条件では、沈殿池の除去性能は表面負荷率と粒子の沈降速度との関係で表される。一方、実際の凝集沈殿池ではフロックの成長、流れの偏り、汚泥の堆積などが影響するため、表面負荷率だけで沈殿性能が決まるわけではない。
2.表面負荷率の基本式
表面負荷率は、処理水量を沈殿池の水面積で除して求める。
v₀ = Q / A
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| v₀ | 表面負荷率(m/h、mm/minなど) |
| Q | 沈殿池の処理水量(m³/h、m³/minなど) |
| A | 沈殿に有効な水面積(m²) |
水面積 A は、上方から見た沈殿池の水平投影面積であり、水が流れる鉛直断面の面積ではない。長方形の横流式沈殿池で、沈殿部の長さを L、幅を B とすると、A=BL となる。
例えば、処理水量 Q=2,880m³/日、水面積 A=100m²の場合、表面負荷率は28.8m/日となる。これを換算すると1.2m/h、20mm/minであり、これらは同じ値を異なる単位で表したものである。
表面負荷率は速度と同じ長さ/時間の単位を持つが、池内の水平方向の平均流速を意味するものではない。横流式沈殿池の平均水平流速は、流量を水深と池幅の積である流下断面積で除して求める。
u = Q / (BH)
ここで u は平均水平流速、H は水深である。表面負荷率 v₀ と平均水平流速 u は、計算に用いる面積も物理的な意味も異なる。

3.表面負荷率と沈降速度の関係
3.1 理想沈殿池における沈降
理想的な横流式沈殿池では、水が池内を一定の水平速度で均等に流れ、粒子はそれぞれ一定の沈降速度で下方へ移動すると考える。粒子の沈降速度を vₛ、池の長さを L、幅を B、水深を H とする。
池内の水量は BLH=AH であり、流入・流出が定常で池内の全水量が有効に利用されるとき、平均滞留時間 t は次のようになる。
t = BLH / Q = AH / Q
実際の沈殿池には偏流や短絡流などがあるため、この式で求めた滞留時間と、個々の水や粒子の実際の滞留時間が一致するとは限らない。
3.2 限界沈降速度
水面付近から沈降を始めた粒子が、流出する前に池底へ到達する条件を考える。水深 H を沈降速度 vₛ で移動するのに必要な時間 tₛ は、次のとおりである。
tₛ = H / vₛ
池底へ到達するためには、沈降に要する時間が滞留時間以下であればよい。
H / vₛ ≦ AH / Q
この式を整理すると、次の条件が得られる。
vₛ ≧ Q / A = v₀
この v₀ を限界沈降速度として考えることができる。一定速度で沈降する独立粒子の理想モデルでは、vₛ が v₀ 以上の粒子は、流入位置の高さにかかわらず流出前に除去される。
3.3 理想沈殿池では水深に依存しない理由
池の長さ L、幅 B、処理水量 Q を変えずに、水深だけを H から2Hにした場合を考える。水面積 A は変わらないが、流下断面積 BH は2倍になるため、平均水平流速 u は半分となる。
一方、水量が2倍になることで平均滞留時間 t は2倍となり、水面から池底まで沈降するのに必要な時間 tₛ も2倍になる。したがって、流出前に池底へ到達できるかどうかを決める条件 vₛ≧v₀ は変化しない。

これは、粒子の沈降速度が一定で、池内に短絡流や再浮上などがない理想条件で成立する関係である。「沈殿池は深くしても意味がない」ということではなく、理想モデルにおける沈降除去の限界速度が水深に依存しないことを意味する。
3.4 実際の凝集沈殿池で水深が重要となる理由
凝集沈殿池では、沈降中のフロックが互いに衝突・凝集し、大きさや沈降速度が変化する場合がある。このような凝集性沈降は、粒子の沈降速度を一定とする理想沈殿モデルだけでは十分に表せない。
水深は、フロックの沈降過程や滞留時間、池内の流況に関係する。また、沈殿した汚泥を一時的に保持する深さと、水面変動を考慮した余裕高も別に確保する必要がある。
横流式沈殿池では、有効水深を3~4m程度とし、これとは別に汚泥堆積のための深さとして30cm以上を見込む。有効水深は主として沈殿処理に利用する水深であり、堆泥深さは常時その厚さの汚泥が存在するという意味ではない。余裕高は高水位から池天端までの高さで、これらとは区別する。

4.表面負荷率と沈殿性能
同じ沈殿池で処理水量 Q が増えると、表面負荷率 v₀ も大きくなる。一定の沈降速度を持つ粒子について考えると、表面負荷率が大きいほど流出前に池底へ達することが難しくなり、理論除去率は低下する。
独立粒子が一定の沈降速度 vₛ を持ち、流入断面の水深方向に均等に分布する理想条件では、その沈降速度を持つ粒子群の理論除去率 η は次のようになる。
- 0 ≦ vₛ / v₀ < 1 のとき:η(%)=100 × vₛ / v₀
- vₛ / v₀ ≧ 1 のとき:η(%)=100
例えば vₛ=0.5v₀ の粒子群では、理論上の除去率は50%となる。これはその沈降速度の粒子群についての値であり、沈降速度の異なる粒子が混在する原水全体の除去率を直接示すものではない。

5.設計・運転管理上の注意点
5.1 設計に用いる表面負荷率
横流式沈殿池では、原水水質、凝集の状態、整流の程度、水温、汚泥の排出方法などを考慮して表面負荷率を設定する。設計上の標準的な値は次のとおりである。
| 項目 | 設計上の目安 |
|---|---|
| 単層式横流式沈殿池の表面負荷率 | 15~30mm/min |
| 多階層式横流式沈殿池の表面負荷率 | 15~25mm/min |
| 横流式沈殿池の池内平均流速 | 0.4m/min以下 |
| 横流式沈殿池の有効水深 | 3~4m程度 |
| 汚泥堆積のために見込む深さ | 30cm以上 |
これらは、施設形式と適用条件を踏まえて使用する設計上の標準値である。表面負荷率と池内平均流速は異なる指標であり、有効水深や堆泥深さとも区別して検討する必要がある。
5.2 処理水量・流況・水質の影響
運転中に処理水量が増えると表面負荷率が上昇し、一般に粒子が沈降するための余裕は小さくなる。ただし、処理水量が同じでも、流入部の整流不足や池内の短絡流によって一部の水が早く流出すると、期待した沈殿性能が得られないことがある。
水温や水質の変化はフロックの形成・沈降に影響するほか、水温差に伴う密度流や堆積汚泥の巻き上がりも処理水質を悪化させる要因となる。沈殿池の運転管理では、流量だけでなく、凝集状態、沈殿水濁度、汚泥の堆積・排出状況などを合わせて確認する。
5.3 傾斜板沈殿池との違い
傾斜板(管)式沈殿池では、沈降面を複数設けて粒子の沈降距離を短くし、沈殿効率を高める。表面負荷率の評価では、採用する装置の形式に応じた沈降面の有効面積や、その水平投影面積などの算定方法を確認する必要がある。
そのため、通常の横流式沈殿池と傾斜板沈殿池の表面負荷率を、面積の定義を確認せずに比較してはならない。また、傾斜板への汚泥付着や短絡流の発生などにも注意する。
6.まとめ
表面負荷率は、処理水量 Q を沈殿池の水面積 A で除した値であり、沈殿池の処理能力を検討する基本的な指標である。水平方向の平均流速とは異なり、一定速度で沈降する独立粒子の理想条件では、粒子の沈降速度との比によって理論除去率を説明できる。
理想沈殿池では、流量と水面積が同じなら、沈降除去条件は水深に依存しない。一方、実際の凝集沈殿池ではフロックの成長、流況、汚泥の堆積などが影響するため、表面負荷率に加えて有効水深や滞留時間、整流・排泥条件を総合的に検討する必要がある。
関連用語
参考資料
- 日本水道協会『水道施設設計指針2024』第5編「浄水施設」5.4.4「横流式沈澱池の構成および構造」、5.4.5「横流式沈澱池(単層式、多階層式)」、5.4.6「傾斜板(管)式沈澱池」

