空気弁

読み仮名
くうきべん
英語表記
Air valve
目次

概要

空気弁は、管路内にたまった空気を排出し、排水時などには管路内へ空気を取り入れるための弁である。上水道・工業用水道の管路に設け、空気だまりによる通水障害を抑えるとともに、充水・排水を円滑に行う役割を持つ。

充水時の大量の排気、通水中の圧力下排気、排水時などの吸気では、必要な機能が異なる。空気弁の形式と作動原理を理解し、管路の形状や運転条件に応じて設置位置と能力を選ぶことが重要である。

1.空気弁の役割

管路内の空気には、充水時に残ったもの、流入する水に混入したもの、水に溶けていた空気が圧力や温度の変化によって分離したものがある。空気の移動は流速や管の勾配にも左右されるが、管路の凸部には空気が集まりやすい。

空気だまりが大きくなると、水が通る断面を狭め、通水能力の低下や損失水頭の増加を招く。送水量が安定しない原因にもなるため、空気を集めて管外へ逃がす経路が必要となる。

空気だまりの影響は、管路の形状や空気量、流れの状態によって変わる。通水量の低下をすべて空気のせいと判断するのではなく、弁の開度や管内の堆積物など、ほかの原因と区別して調べることが必要である。

一方、管路から水を抜く際に外部から空気を取り入れられないと、管内圧力が低下し、排水が進みにくくなる。条件によっては管の変形や損傷にもつながるため、排気だけでなく、必要な量の空気を吸入できることも重要である。

管路の凸部に空気が集まりやすいことと、頂部に設置した空気弁および補修弁から空気を排出する仕組みを示す縦断模式図

2.空気弁の種類と構造

2.1 主な種類

空気弁は、空気孔の構成や作動機構によって種類が分かれる。名称だけで判断せず、大量の吸排気と圧力下排気のどちらに対応するか、必要な能力が得られるかを確認する。

種類構造・機能の特徴
単口空気弁小空気孔とフロートを備える形式。圧力下の少量排気を行う。小空気孔から吸気する形式もあるが、大量の吸排気には適さない。
双口空気弁大・小の空気孔と、それぞれに対応するフロート機構を備える形式。大空気孔で大量の吸排気、小空気孔で圧力下排気を行う。
急速空気弁大量の吸排気と圧力下排気の機構を一つの弁箱にまとめた形式。大空気孔と小空気孔を使い分けるが、内部の機構は製品によって異なる。

2.2 急速空気弁の基本構造

急速空気弁は、管路と連通する弁箱、空気の出入口となる空気孔、止水する弁座、水位に応じて動くフロートなどで構成される。空気孔の開閉は、フロートの浮力と自重に加え、弁体に作用する圧力差の影響を受ける。

図に示す形式では、大空気孔を開閉する遊動弁体に小空気孔が設けられ、フロート弁体がその小空気孔を開閉する。満水になると両方の空気孔が閉じ、水が外部へ流出するのを防ぐ。補助フロートなどの細部は製品固有であり、図は主要部の位置関係を示した模式図である。

急速空気弁の断面構造について、弁箱、フロート弁体、遊動弁体、大空気孔・小空気孔および弁座の位置関係を示す模式図

3.空気弁の作動原理

3.1 充水時の排気

空の管路へ水を入れると、水に押された空気が空気弁へ流れ込む。弁箱内の水位が低い間はフロートと遊動弁体が下がり、大空気孔が開いているため、多量の空気を排出できる。

充水が進んで水が弁箱内へ達すると、水位の上昇に伴ってフロートが浮き上がる。図の形式では遊動弁体も持ち上がり、満水時には大・小空気孔が閉じる。充水時の排気は、後述する通水中の小空気孔からの排気とは異なる作動である。

排気量が充水量に追いつかないと、空気を十分に抜けないまま管内圧力が上昇する。空気弁があることだけを理由に充水を速めず、空気の排出状況に合わせて流入量を調整する必要がある。

3.2 通常通水時の圧力下排気

通水中に空気が集まると、弁箱内の水位が下がり、フロートに働く浮力が減少する。使用圧力範囲内ではフロートが自重で下がり、小空気孔が開くため、管内と大気との圧力差によって空気が排出される。

このとき、大空気孔は内圧によって閉じた状態を保ち、小空気孔だけで排気する。空気が減って水位が上がればフロートが浮き、小空気孔は再び閉じる。この動作を繰り返すことで、送水を続けながら少量ずつ空気を排出する。

小空気孔を開くためには、圧力による閉止力とフロートの自重などの関係が成立する必要がある。使用条件が製品の圧力下排気範囲を外れると、空気がたまっても正常に排気できない場合がある。

3.3 排水時・負圧時の吸気

排水などで管内の水位と圧力が低下すると、フロートや遊動弁体が下がり、大空気孔が開く。管内圧力が大気圧より低くなれば、その圧力差によって外部の空気が管内へ流入する。

吸気は水の抜けた空間を空気で補い、過度の圧力低下を抑える働きである。ただし、弁が開く条件や吸気能力によって効果は異なる。ポンプ停止などに伴う急激な圧力変動では、空気弁の作動だけで管路の安全性が確保されるとは限らない。

急速空気弁について、充水時に大空気孔から排気する状態、通常通水中に小空気孔から圧力下排気する状態、排水時に大空気孔から吸気する状態を比較した図

4.空気弁の選定と設置上の注意点

4.1 設置位置と吸排気能力

設置位置は、空気が集まりやすい管路の凸部を基本とする。地表の高低だけで決めず、管路の縦断形状、制水弁で区切られる範囲、充水・排水の方向を確認する。長い区間では、途中の空気を排出・吸入できるかも検討する。

設置間隔や口径を一律に決めることはできない。充水時に押し出される空気量、排水時に必要な吸気量、作動時の圧力差を整理し、メーカーの吸排気性能曲線などから選定する。管路全体の配置条件については「管路設計」と併せて理解するとよい。

急な圧力低下で生じる蒸気の空洞と、管内に残った空気だまりは、発生の仕組みが異なる。吸気によって空気を導入した後の再充水や排気も含め、運転の一場面だけで安全性を判断しないことが重要である。

使用圧力は最高圧力だけでなく、低圧時の止水性や圧力下排気の上限も確認する。同じ接続口径でも、形式によって空気孔の大きさや作動条件が異なるため、口径だけで能力を比較しない。

また、大きな空気孔を設ければ常に安全になるわけではない。排気の終盤に水が到達して弁が急閉止すると、圧力上昇を生じる場合がある。ポンプ停止時などの検討では、吸排気特性を含めた過渡的な管路挙動を確認し、必要に応じて他の対策設備と組み合わせる。

「逆止弁」が水の逆流を抑えるのに対し、空気弁は空気の出入りを扱う設備である。両者は代替関係にはなく、圧力変動や水柱分離の詳しい考え方は「水撃作用」を参照する。

4.2 施工上の注意点

空気弁は、フロートが正常に上下できるよう、製品で指定された姿勢で取り付ける。下部には点検・補修のための補修弁を設け、通常は開いた状態で使用する。接続部や補修弁で必要な吸排気経路を狭めないことも重要である。

弁室には、外気との通気経路と点検・分解のための空間を確保する。浸水した弁室から汚水を吸い込むことがないよう、雨水や地下水の流入、排水方法にも配慮する。寒冷地では、通気を妨げずに凍結を防ぐ対策が必要となる。

5.運転・維持管理上の注意点

5.1 充水・排水時の確認

充水前には、補修弁の開閉状態、空気孔や弁室の通気経路、排気に伴う噴水への備えを確認する。ポンプや制水弁を操作するときは、計画した充水速度を守り、排気音、漏水、圧力の変化から作動状況を確認する。

排水時にも吸気経路が確保されていることを確認し、吸気が追いつかない速さで水を抜かない。充排水後は止水状態を確かめる。制水弁の操作やポンプ運転の基本は、それぞれの関連記事と併せて確認する。

5.2 点検と主な不具合

空気弁は自動で作動するが、点検が不要な設備ではない。外観や漏水の有無に加え、補修弁の状態、弁室の浸水、腐食、通気経路の閉塞などを確認し、必要に応じて内部を清掃・整備する。

主な症状確認する事項
空気が抜けない補修弁の閉止、空気孔の閉塞、フロートの固着、使用圧力と排気範囲の不適合
排気口から漏水する弁座への異物のかみ込み、弁座・弁体の損傷、フロートの作動不良、低圧時の止水条件
吸気が不足する通気経路の閉塞、弁体の固着、排水量に対する吸気能力の不足

点検の間隔や部品の交換時期は、水質、作動頻度、設置環境、メーカーの推奨事項などを踏まえて定める。漏水や閉塞の発生履歴を残し、清掃や交換の計画に反映させることが望ましい。

異常が見られた場合は、弁本体だけでなく運転条件も照合する。分解時は補修弁で管路から隔離したうえで残圧を解放し、無圧を確認してから、製品の取扱説明書に従って作業する。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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