- 読み仮名
- かんろせっけい
- 英語表記
- Pipeline Design
概要
管路設計とは、水道施設において、必要な水量を適切な水圧で安定して送るために、管径、管種、布設ルート、付属設備などを計画することである。対象となる管路には、原水を浄水場へ送る導水管、浄水を配水池などへ送る送水管、需要者へ水を供給する配水管などがある。
管路は、単に水が流れればよいわけではない。水理的な性能に加え、構造的な安全性、施工性、経済性、維持管理の容易さなどを総合的に考慮する必要がある。
1.管路設計の基本的な考え方
管路設計では、まず水をどこからどこへ、どれだけ送る必要があるのかを明確にする。計画流量、起点と終点の水位や水頭、必要な水圧などを設定し、需要変動や運転条件も考慮して設計条件を整理する。
次に、水理計算によって必要な管径を検討するとともに、地形や道路、既設埋設物などの条件を踏まえて布設ルートを選定する。そのうえで、管種や付属設備、施工方法などを検討し、管路全体の計画を具体化していく。
設計条件は管路の用途によって異なる。例えば、送水管では必要な送水量と送水先の水位が重要となり、配水管では需要の時間変動や管網内の水圧なども考慮する必要がある。
2.水の流れと水圧の基本
水道管路の送水方式には、主に自然流下方式とポンプ圧送方式がある。自然流下方式は起点と終点の水頭差を利用して水を流し、ポンプ圧送方式はポンプで水にエネルギーを与えて送水する方式である。
管内の水の流れを考える際には、地盤や管路の高さだけでなく、水頭を理解する必要がある。水頭とは、水が持つエネルギーを水柱の高さで表したもので、位置水頭、圧力水頭、速度水頭などがある。
動水勾配線と管内水圧
動水勾配線とは、管路の各地点における位置水頭と圧力水頭の和を結んだ線である。管内を水が流れると摩擦などによってエネルギーが失われるため、一定管径の直管では、流れに沿って動水勾配線が低下する。
管内の圧力水頭は、動水勾配線と管中心との鉛直距離で表される。管中心が動水勾配線より下にあれば正のゲージ圧となり、上にあれば負圧となる。

図1のように、地形に沿って一定の土被りを確保した管路でも、丘の頂部で動水勾配線を上回る場合がある。このような位置では、負圧によって接合部などから空気を吸い込んだり、溶存気体が遊離したりして、通水に支障を生じるおそれがある。
管路設計では、配水池の水位変動やポンプの運転条件などを考慮し、管内水圧が適切な範囲に収まることを確認する。特に、最大・最小水圧を把握し、過大な内圧や継続的な負圧が生じないように計画することが重要である。
水撃作用とその対策
ポンプの急停止や弁の急閉鎖などによって管内の流速が急変すると、水圧が急激に上昇・低下することがある。この現象を水撃作用(ウォーターハンマー)といい、過大な圧力や水柱分離によって管路や設備が損傷するおそれがある。
管路設計では、管路の延長や縦断形状、流速、ポンプの運転条件などを考慮し、必要に応じて水撃解析を行う。対策には、弁の閉鎖速度の調整、フライホイールによるポンプの急減速防止、サージタンクやエアチャンバーによる圧力変動の緩和などがある。
また、空気弁による吸気が、急激な圧力低下を緩和する場合もある。ただし、流入した空気を急激に排出すると圧力上昇を生じることがあるため、管路の特性に応じた対策が必要である。
3.管径と水理設計
管径は、必要な流量を確保するための重要な設計条件である。管内を流れる水の流量は、管の断面積と平均流速の積で表される。
流量 Q = 断面積 A × 平均流速 v
円形の管では、断面積は内径の2乗に比例する。そのため、同じ流量を流す場合、管の内径が2倍になると平均流速は4分の1になる。
管径と損失水頭の関係
管内を水が流れると、管壁との摩擦によってエネルギーが失われる。この損失を水頭で表したものが、摩擦による損失水頭である。
同じ流量を流す場合、管径が小さいほど流速が速くなり、一般に摩擦損失が大きくなる。一方、管径を大きくすると流速が遅くなり、損失水頭を小さくできる。

管路の損失水頭には、直管部分の管壁摩擦による損失のほか、曲管、分岐・合流部、バルブ、ストレーナーなどで生じる局部損失がある。特に、バルブの開度やストレーナーの目詰まりによって損失が増加するため、設置する機器の特性や運転条件を考慮して水理計算を行う。
管径の選定と経済性
管径は大きければよいわけではない。管径を大きくすると摩擦損失は減少するが、管材料費や施工費が増加するため、必要な流量や水圧を確保できる範囲で、経済性を考慮して選定する必要がある。
特にポンプ圧送方式では、管径が小さいと摩擦損失が増加し、必要なポンプ揚程や運転電力が大きくなる。このため、管路の建設費とポンプ設備費・運転費を総合的に比較することが重要である。
4.管路のルートと縦断計画
管路のルートは、地形、道路、河川、鉄道、既設埋設物などの条件を踏まえて選定する。延長が短いルートが必ずしも有利とは限らず、施工の難易度や用地条件、将来の維持管理なども考慮する必要がある。
管路の平面・縦断線形は、必要な土被りを確保するとともに、水理条件や施工条件、既設埋設物との位置関係などを総合的に考慮して決定する。特に、他事業者の埋設管や地下構造物との交差・近接箇所では、必要な離隔を確保できるよう、管路の平面位置や高さ、縦断勾配を調整する。
埋設深さと縦断形状
埋設管路では、地表面から管頂までの深さである土被りを適切に確保する必要がある。必要な土被りは、道路などの上載荷重、他の埋設物との離隔、施工条件などを踏まえて決定する。
管路の平面・縦断線形は、必要な土被りを確保するとともに、水理条件や施工条件、既設埋設物との位置関係などを総合的に考慮して決定する。特に、他事業者の埋設管や地下構造物との交差・近接箇所では、必要な離隔を確保できるよう、管路の平面位置や高さ、縦断勾配を調整する。
河川・道路などの横断
河川や幹線道路、鉄道などを横断する場合には、横断位置と施工方法を慎重に検討する。開削工法による施工が難しい場合には、推進工法やシールド工法などの非開削工法が採用されることがある。
河川を地下で横断する場合には、現況河床だけでなく、計画河床や河床洗掘なども考慮して管路の深さを決定する。河川管理者との協議に加え、施工時の地盤条件や必要な離隔を確認することが重要である。
5.管路の付属設備
管路には、通水の遮断や空気の排出、排水などを行うための付属設備を設ける。これらの設備は、管路の縦断形状や水理条件だけでなく、事故対応や維持管理の方法も考慮して配置する。
空気弁
空気弁は、主に管路の凸部など、空気が集まりやすい位置に設置する。管内に滞留した空気を排出するほか、管路の排水時や急激な圧力低下時に空気を吸入し、過度な負圧を緩和する役割がある。
空気弁の選定では、管路の流量や圧力条件に応じて、必要な吸気量と排気量を検討する。特に水撃対策として使用する場合には、圧力差に対する吸排気能力や排気時の圧力上昇にも注意する必要がある。
なお、通常運転で継続的に負圧が生じる場合は、空気弁の設置だけで対応するのではなく、管路の縦断線形や水理条件を見直すことが基本となる。
制水弁
制水弁は、管路の通水を遮断し、必要な区間を切り離すために設置する。例えば、河川横断部の前後に制水弁を配置することで、横断区間で事故が発生した場合や補修を行う場合に、対象区間を遮断できる。

制水弁の配置は、事故時に断水する範囲や、補修作業のために排水する区間にも影響する。そのため、管路の構成や維持管理の方法に応じて、必要な位置を検討することが重要である。
排水設備
管路の排水や洗管を行うためには、必要に応じて泥吐弁やドレン配管などの排水設備を設ける。設置位置は管路の低い箇所だけでなく、排水先の位置や排水条件なども考慮して決定する。
空気弁、制水弁、泥吐弁などの詳細な構造や機能については、それぞれの用語の記事で解説する。
6.管種と管路構造
管種は、必要な水圧、流送する水の水質、土被り、地盤条件、耐震性、施工方法、経済性などを考慮して選定する。水道管路には、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、水道配水用ポリエチレン管など、さまざまな種類が使用されている。
主な管種の特徴を次に示す。
| 管種 | 主な特徴 |
|---|---|
| ダクタイル鋳鉄管 | 機械的強度が高く、耐震継手を備えた製品もある |
| 鋼管 | 溶接接合が可能で、さまざまな配管形状に対応できる。腐食対策が重要となる |
| 水道配水用ポリエチレン管 | 耐食性と柔軟性を有し、融着接合によって一体性を確保できる |
| 硬質塩化ビニル管 | 軽量で耐食性があり、使用圧力や施工条件に応じて適用する |
実際の選定では、管種だけでなく、管厚、継手形式、使用圧力、内外面の防食仕様などを確認する必要がある。さらに、土圧や車両荷重などの外圧に対しても、安全な構造としなければならない。
異形管防護
曲管や分岐管、管端部などには、管内水圧によって管を動かそうとする不平均力が作用する。このため、継手の離脱や管路の移動を防ぐために、必要な拘束長を確保したり、防護工を設けたりする。
管路の耐震性
地震時には、地盤の変位や不同沈下によって、管体や継手に大きな力が作用することがある。管路の耐震性を確保するためには、管体の強度だけでなく、継手の伸縮性や屈曲性、離脱防止性能なども考慮する必要がある。
特に、地盤条件が変化する場所や構造物との接続部などでは、地震時に生じる相対変位への対応が重要となる。
7.施工・維持管理を考慮した設計
管路設計では、完成後の性能だけでなく、実際に施工できるかどうかを確認する必要がある。例えば、道路内に管路を布設する場合には、既設埋設物との離隔、掘削幅、土留め、交通規制などの条件が施工方法に影響する。
また、軟弱地盤や地下水位の高い場所では、施工時の掘削や管路の支持条件にも注意が必要である。必要に応じて、管基礎や地盤改良、適切な管種・継手などを検討する。
維持管理と将来の更新
管路は完成後、長期間にわたり使用される施設である。そのため、制水弁や空気弁などを操作・点検しやすい位置に配置し、事故時の補修や将来の更新にも対応できるように計画する。
特に、河川横断部や重要な送水管など、停止時の影響が大きい管路では、事故時の区間遮断や復旧方法をあらかじめ検討する必要がある。必要に応じて、連絡管や代替ルートなどによるバックアップ機能も考慮する。
管路設計は、管を布設できれば終わりではない。 必要な流量と水圧を確保しながら、安全に施工でき、将来にわたって維持管理しやすい管路を計画することが重要である。

