- 読み仮名
- どうすいしせつ
- 英語表記
- Raw Water Conveyance Facilities
概要
導水施設とは、河川やダム、地下水などから取水した原水を、浄水場などの必要な施設まで運ぶための施設である。主な構成要素には導水管、導水渠、導水ポンプ設備などがあり、水源と浄水場の位置関係、地形、必要な水量などに応じて適切な方式を選定する。
導水施設は、浄水処理に必要な原水を安定して供給する役割を担う。導水が停止すると浄水場への原水供給に支障が生じるため、施設の信頼性、維持管理のしやすさ、事故時の対応などを考慮することが重要である。
1.導水施設とは
導水は、取水施設で取り入れた原水を浄水場などへ運ぶ工程である。浄水処理を終えた水を配水池などへ送る「送水」や、需要者へ供給する「配水」とは区別される。
導水施設は、原水を必要な量だけ確実に運ぶことを基本とし、導水管や導水渠のほか、運転条件に応じてポンプ設備、弁類、接合井、原水調整池などを組み合わせて構成される。

導水施設の構成は、水源と浄水場の標高差や距離、周辺の地形などによって異なる。自然流下で導水できる場合には水位差を利用し、それだけでは必要な水量を運べない場合にはポンプ設備を用いる。
2.導水施設の種類と構造
導水施設の主要な水路は、導水管と導水渠に大別される。両者は水の流れ方や施設構造が異なるため、設計上の検討事項にも違いがある。
2.1 導水管
導水管は、管路を用いて原水を運ぶ施設であり、一般に管内を水で満たした圧力流れによって導水する。
導水管では、管径、延長、管材、内面粗度、管路の縦断形状などに応じて損失水頭が生じる。管路内の圧力や水撃作用、空気の滞留などにも注意する必要がある。
2.2 導水渠
導水渠は、原水を水路によって運ぶ施設であり、一般に自由水面をもつ開水路流れによって導水する。開渠のほか、暗渠やトンネル形式などが用いられる。
導水渠では、水路の勾配、断面形状、粗度、流量などによって流速や水深が決まる。必要な通水能力を確保するとともに、堆積物、土砂の流入、水路からの溢水などに配慮する。
2.3 導水管と導水渠の違い
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導水管 | 主に満管の圧力流れで原水を運ぶ。管内圧力や損失水頭の検討が重要となる。 |
| 導水渠 | 主に自由水面をもつ開水路流れで原水を運ぶ。水路勾配、流速、水深などの検討が重要となる。 |
導水管と導水渠の選定では、必要な流量、地形、施工条件、維持管理、経済性などを総合的に比較する。導水渠には暗渠やトンネルも含まれるため、構造物が地下にあるという理由だけで導水管に分類されるわけではない。
3.導水方式と水の流れ
導水方式は、水を流すためのエネルギーをどのように確保するかによって、自然流下方式とポンプ加圧方式に大別できる。
3.1 自然流下方式
自然流下方式は、上流側と下流側の水頭差を利用して水を運ぶ方式である。ポンプによる加圧を必要としないため、運転に必要な動力を抑えられる。
ただし、自然流下方式が成立するためには、利用できる水頭差が、管路や水路で発生する損失水頭などに対応できることが必要である。
圧力式の導水管では、管路の縦断形状と動水勾配線の位置関係が重要となる。管路の高所などで圧力が過度に低下すると、空気の滞留や負圧に関係する問題が生じるおそれがある。
3.2 ポンプ加圧方式
ポンプ加圧方式は、ポンプによって水にエネルギーを与え、必要な水量を運ぶ方式である。水源より高い位置にある浄水場へ導水する場合や、自然流下だけでは必要な水頭を確保できない場合などに用いられる。
ポンプの全揚程は、上下流の水位差だけでなく、管路で発生する損失水頭なども考慮して決定する。また、流量変動に応じた運転方法、停電時の対応、水撃作用の防止なども重要となる。

4.導水施設の設計上の留意点
導水施設の設計では、計画導水量を確実に運べることに加え、適切な水理条件を維持できることが重要である。水源や浄水場の運用条件、施設の延長、地形、施工条件などを踏まえて検討する。
4.1 導水量と通水能力
導水施設は、浄水場で必要となる原水量を確保できる能力を備える必要がある。必要な導水量は、計画浄水量、運転時間、水源の取水条件などを考慮して設定する。
導水管では、管径や管材、管路延長などに基づいて損失水頭を求め、必要な流量を運べるか確認する。導水渠では、水路断面や勾配などに基づいて通水能力と流速を検討する。
4.2 管路の縦断形状と水圧
導水管の縦断形状は、管内の圧力や空気の滞留に影響する。局所的な高所や低所がある場合には、その位置と水理条件を確認し、必要な付属設備を設ける。
自然流下による圧力管路では、上流側の水頭を超える位置まで管路を持ち上げればよいというものではない。通常の正圧による導水では、管頂が動水勾配線より低くなるように計画することが基本である。
4.3 施工条件と維持管理性
導水管や導水渠のルートは、地形、地質、既設埋設物、道路、河川などとの交差条件を考慮して選定する。施工時の安全性だけでなく、完成後の点検や補修のしやすさも重要となる。
特に長距離の導水施設では、事故や漏水が発生した際に、対象区間を特定して対応できる構成が望ましい。必要に応じて、管路の区間分割、連絡設備、代替導水経路などを検討する。
5.導水管の付属設備
導水管には、管内の空気を排出・吸入する空気弁、管内水を排出する排水設備、管路を遮断する制水弁などを設置する。
これらの設備は、管路の縦断形状、運転条件、維持管理の必要性などに応じて配置する。
5.1 空気弁
空気弁は、管内に滞留する空気の排出や、管内圧力の低下時などに必要となる空気の吸入を行う設備である。管路の凸部など、空気が集まりやすい位置への設置を検討する。
空気の滞留は通水能力の低下などにつながる場合があるため、管路の水理条件や運転方法を踏まえて適切に配置する。
5.2 排水設備
排水設備は、管路の点検、修繕、洗浄などの際に、管内水を排出するための設備である。一般に、管路の凹部など、水が集まりやすい位置への設置を検討する。
排水設備では、排水弁の操作方法に加え、排水量や排水先、周辺への影響などを考慮する必要がある。
5.3 制水弁
制水弁は、管路の流れを遮断し、点検や修繕の対象区間を分離するための設備である。空気弁や排水設備とは異なり、必ずしも管路の高所や低所に設置するものではない。
施設の配置、維持管理の方法、事故時の対応範囲などを考慮し、必要な位置に設置する。

6.導水施設の運転・維持管理
導水施設では、必要な原水量を安定して確保するため、流量、水圧、水位などの運転状況を継続的に確認することが重要である。
特に導水管では、漏水、圧力の異常、空気の滞留、弁類の不具合などが通水に影響することがある。導水渠では、土砂や流木などの堆積、構造物の損傷、周辺からの流入などに注意する。
6.1 日常点検と異常の把握
日常点検では、流量や水圧などの変化を確認し、通常時と異なる傾向がないか把握する。導水量の低下や異常な圧力変動が生じた場合には、取水条件、弁類の状態、管路の損失水頭などを含めて原因を調査する。
埋設された導水管は外観から状態を確認しにくいため、運転データの変化や漏水調査などを組み合わせた管理が重要となる。
6.2 弁類・付属設備の維持管理
空気弁、排水弁、制水弁などは、必要なときに確実に機能する状態を維持しなければならない。設置場所や設備の構造に応じて、漏水、腐食、作動状態などを確認する。
また、排水や弁操作を行う際には、急激な流量変化や圧力変動が生じないよう注意する。管路の充水、排水、再通水では、空気の排出・吸入や水撃作用にも配慮する必要がある。
6.3 事故・災害への備え
導水施設の事故は、浄水場への原水供給に直接影響する場合がある。このため、重要度に応じて、耐震性の確保、施設の更新、代替導水手段の検討などを進めることが重要である。
事故時には、影響範囲の把握、必要な弁操作、応急復旧などを迅速に行える体制が求められる。施設の図面、弁類の位置、操作手順などを適切に管理しておくことも重要である。
関連用語
参考資料
- 公益社団法人 日本水道協会『水道施設設計指針2024』第4編「導水施設」

