有収率

読み仮名
ゆうしゅうりつ
英語表記
Revenue Water Ratio
目次

概要

有収率とは、配水した水量のうち、料金収入などの対象となった有収水量が占める割合を示す指標である。水道事業における水の供給効率を把握し、漏水対策や計量管理などの改善を検討するために用いられる。

有収率が低い場合には、配水した水が収入に結び付いていない要因を調べる必要がある。ただし、有収率が100%に満たない部分には、漏水だけでなく、管内洗浄などに必要な事業用水量やメーター不感水量なども含まれる。

1.有収率とは

有収率は、同じ集計期間における年間有収水量を年間配水量で除して算定する。水量の単位はm³などにそろえ、分子と分母の対象区域や集計範囲も一致させる必要がある。

有収率(%)=年間有収水量÷年間配水量×100

配水量は、配水管の始点を通過して配水系統に送り出された水量である。有収水量は、そのうち料金徴収の基礎となった水量や、他会計からの収入に対応する水量などであり、単純に浄水場でつくった水量や需要者の実使用水量と同じとは限らない。

経営比較分析表などで用いられる「年間総有収水量」「年間総配水量」は、対象事業の年間合計を示す表記である。本記事の算定式も、その年間合計を用いるものとしている。

例えば、年間配水量が100万m³、年間有収水量が90万m³であれば、有収率は90÷100×100=90%となる。残る10万m³の内訳は、この計算だけでは分からないため、水量の分類を確認する必要がある。

なお、有収率は水量を基にした指標であり、請求した料金が実際にどれだけ納付されたかを表す収納率とは異なる。未納の有無と、水量が料金算定の対象となったかどうかを混同しないことが重要である。

2.配水量と水量の分類

日本の水道統計で用いられる水量分類では、配水量を有効水量と無効水量に分け、有効水量をさらに有収水量と無収水量に分ける。

ここでいう「有効」は、料金収入の有無ではなく、水が有効に使用されたかどうかを示す分類である。そのため、管内洗浄などに使用した水も、料金収入がなくても有効水量に含まれる。

水量区分意味と代表例
配水量配水系統に送り出した水量。有効水量と無効水量の合計である。
有効水量水量分類上、有効に使用されたとみなす水量。有収水量と無収水量の合計である。
有収水量料金水量、有償の分水量、他会計からの収入に対応する公共用水量など。
無収水量有効水量のうち収入の対象とならない水量。メーター不感水量、管内洗浄などの事業用水量、無償の公共用水量など。
無効水量配水本支管やメーター上流の給水管からの漏水量、赤水などによる調定減額水量、その他の無効な水量。

メーター不感水量は、使用されたものの、メーターが十分に計量できず料金算定に反映されなかった水量である。一方、赤水などを理由として料金算定上の減額対象となった調定減額水量は、無効水量に含まれる。このため、無効水量のすべてが漏水量とは限らない。

公共用水は用途だけで分類が決まるものではなく、料金や他会計からの収入の有無を確認する。例えば、消防用水であっても、対応する収入があるものと無償で使用したものでは、水量区分が異なる。

各水量には、次の関係が成り立つ。

  • 配水量=有効水量+無効水量
  • 有効水量=有収水量+無収水量
  • 配水量-有収水量=無収水量+無効水量

次の図は、年間配水量100万m³を仮定した水量分類の例である。有収水量90万m³、無収水量5万m³、無効水量5万m³とすると、有効水量は95万m³となる。

この場合、配水量と有収水量の差10万m³は、無収水量と無効水量を合わせた水量であり、「無収水量」という区分が10万m³全体を指すわけではない。また、無収水量と無効水量が同じ5万m³なのは説明用の仮定であり、両者が一致する必要はない。

年間配水量100万m³を有効水量95万m³と無効水量5万m³に分け、有効水量を有収水量90万m³と無収水量5万m³に分けた分類図。

国際的な「無収水」との違い

IWA(国際水協会)の分類における無収水(Non-Revenue Water)は、請求しない認定使用水量と水の損失を合わせたもので、日本の分類の「無収水量」だけを意味するものではない。大枠では日本の無収水量と無効水量の合計に対応するが、メーター不感水量を損失側に分類するなど、内訳の考え方が異なる。

国内資料と海外資料を比較するときは、用語の訳語だけで対応付けず、対象範囲と水量区分を確認する必要がある。

3.有収率・有効率・漏水率の違い

有収率、有効率、漏水率は、いずれも年間配水量を分母とするが、分子に用いる水量が異なる。有収率は収入との関係、有効率は水の有効利用、漏水率は漏水による損失に着目する指標である。

指標算定式と意味
有収率年間有収水量÷年間配水量×100。配水量のうち、料金収入などの対象となった割合である。
有効率年間有効水量÷年間配水量×100。配水量のうち、水量分類上、有効に使用された割合である。
漏水率年間漏水量÷年間配水量×100。配水量のうち、漏水として把握・推定された割合である。

前章の数値例では、有収率は90%、有効率は95%となる。さらに、無効水量5万m³の内訳を漏水量4万m³、調定減額水量1万m³と仮定すると、漏水率は4÷100×100=4%である。

この例で「100%-有収率」は10%、「100%-有効率」は5%となり、いずれも漏水率4%とは一致しない。漏水率を求めるには、無効水量の中でも漏水量を区別して把握する必要がある。

なお、ここでいう漏水量の基本的な対象は、配水本支管と水道メーターより上流の給水管からの漏水である。メーター下流で生じた漏水でも、計量され料金算定の対象となれば有収水量に含まれる場合があり、漏水に伴う減額を行う場合はその取扱いを別途確認する。

4.有収率が低下する主な要因

有収率の低下を確認したときは、まず配水量と有収水量の実数がそれぞれどう変化したかを調べる。割合の変化だけで漏水の増加と断定せず、水量の内訳、計量条件、集計方法を順に確認することが重要である。

確認する要因実務上の確認事項
漏水の増加配水量、夜間流量、圧力、漏水・修繕履歴などを照合する。有収率だけでは漏水量や漏水箇所を特定できない。
計量・集計の問題配水流量計の誤差、需要者メーターの不感、検針値の誤り、積算値の欠測、転記や集計の誤りを確認する。
無収水量の増加管内洗浄、漏水防止作業、無償の公共用水などの使用量と、その記録・推定方法を確認する。
調定減額などの変化赤水などの発生と減額対象水量を確認する。料金の減免額そのものを水量に置き換えない。
需要量・集計条件の変化有収水量の減少、検針期間、区域変更、分水・受水の扱い、計器更新などを確認する。

漏水量や事業用水量が変わらなくても、需要の減少によって有収率が低下する場合がある。例えば、配水量のうち有収水量以外の部分が10万m³のまま、有収水量だけが90万m³から80万m³に減ると、配水量は90万m³となり、有収率は約88.9%に低下する。

配水量は日々の積算値で把握する一方、有収水量は検針・調定の周期に従って集計されるため、短期間では対象期間のずれが影響しやすい。月別の異常を調べる場合も、どの期間の使用を集計した数値かをそろえて比較する必要がある。

5.有収率の改善方法

改善は、水量分析によって要因を整理したうえで、それぞれに対応する対策を組み合わせて進める。漏水を減らす対策と、計量・集計を正確にする対策では、効果の現れ方が異なる。

漏水が主な要因であれば、流量・圧力の監視や配水ブロック別の分析から調査対象を絞り、音聴調査などで漏水箇所を確認して補修する。漏水が繰り返される管路は、管種、布設年度、損傷履歴、供給上の重要度などを踏まえて更新の優先順位を検討する。

過大な水圧が生じている区域では、必要水圧を確保しながら圧力を適切に管理することも対策となる。ただし、減圧による漏水低減効果は条件によって異なるため、末端の給水状況と流量・圧力の変化を確認する必要がある。

計量面では、配水流量計と需要者メーターの精度、設置・使用条件、検針・集計処理を確認する。計量や集計の修正で有収率が改善しても、物理的な漏水が減ったとは限らないため、改善の内容を分けて記録する。

事業用水量は、使用目的、時間、水量を記録し、必要量を把握する。安全な給水に必要な管内洗浄などを一律に減らすのではなく、作業目的を満たしながら過剰な使用を防ぐことが基本である。

対策の評価では、削減できる水量だけでなく、取水・浄水・送配水に要する費用の削減、事故の回避、安定給水への効果と実施費用を比較する。需要が変わらない場合、漏水を減らしても有収水量がそのまま増えるわけではなく、主に必要な配水量の減少として効果が現れることに注意が必要である。

6.有収率を評価する際の注意点

経年比較と事業体間比較

経年比較では、有収率に加え、配水量、有収水量、無収水量、無効水量を並べて確認する。算定範囲や推定方法を変更した年度は、実際の改善と集計条件の変化を区別できるように記録しておく。

事業体間の比較では、事業規模、管路延長、給水区域の広さや地形、需要密度、水源条件、計量方法などを考慮する。同じ有収率でも、失われる水量の大きさや対策費用、水資源上の影響が同じとは限らない。

目標は自事業の実態と改善余地に基づいて設定する必要がある。有収率だけを事業全体の健全性の判定基準とせず、料金回収率、収支、施設の状態、更新需要などと組み合わせて評価する。

工業用水道との違い

工業用水道では、実際に使用した水量にかかわらず、契約水量に応じて基本料金を徴収する責任水量制を採用している事業がある。この場合、料金算定の基礎となる水量と実際の給水量が一致するとは限らず、上水道と同じ感覚で有収率を比較することはできない。

工業用水道の数値を扱う際は、契約水量、料金算定に用いる有収水量、実給水量、配水量を区別し、当該資料の定義と料金制度を確認する。契約に基づく水量と実際に流れた水量を混在させた比率を、そのまま漏水や水利用の効率と読み替えてはならない。

関連用語

参考資料

  • 大阪広域水道企業団「業務指標の算出結果(JWWA Q 100:2016)」河南水道事業、令和6年度、B110~B112(PDF 6ページ)。資料を開く
  • 「経営指標の概要(水道事業)」黒石市公開資料、⑧有収率(3~4ページ)。資料を開く
  • 広島市水道局「第一章 漏水防止計画」、配水量の分析・用語の定義・算定式(3~5ページ)、漏水防止対策(1~3ページ)。資料を開く
  • 国際協力機構(JICA)『日本の水道事業の経験』テーマ5「無収水対策」、T5-2~T5-3。資料を開く
  • 水道技術研究センター『水道ホットニュース』第935号(2025年3月14日)、1ページの水量分類・年間漏水量の説明。資料を開く
  • 愛知県「工業用水道の料金について」。資料を開く
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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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