アセットマネジメント

読み仮名
あせっとまねじめんと
英語表記
Asset Management
目次

概要

アセットマネジメントとは、施設などの資産を長期的な視点で管理し、持続可能な事業運営につなげる活動である。水道事業では、施設の状態や将来の更新需要を把握し、財政収支の見通しと組み合わせながら、維持管理や施設更新を計画的に進める。日本語では「資産管理」という。

1.目的と基本的な考え方

水道施設は長期間にわたって使用される一方、更新には多額の費用と時間が必要となる。同じ時期に整備した施設の更新が集中すると、資金の確保や工事の実施が難しくなるため、将来の負担を見通しておく必要がある。

アセットマネジメントでは、個々の施設の点検・診断・修繕と、事業全体の更新需要・財政収支の検討を結び付ける。前者を「ミクロマネジメント」、後者を「マクロマネジメント」といい、現場の情報を事業全体の判断に生かす関係にある。

施設の現状把握から更新需要と財政収支の検討、更新計画の策定、実行・見直しへ進み、結果を次の計画に反映する循環を示した図

目的は、必要な供給機能を維持しながら、施設と財政の両面で事業を持続させることである。台帳の整備や更新費用の試算だけで終わらず、実際の維持管理や更新計画に反映させることが重要となる。

水道法第22条の4では、水道事業者に対し、長期的な観点からの計画的な更新と、更新費用を含む事業の収支見通しの作成・公表に努めることを求めている。

水道法施行規則第17条の4では、30年以上の長期的な収支を試算し、その結果に基づいて10年以上を基準とする合理的な期間の収支見通しを作成・公表するよう努めることとしている。また、作成した見通しは、おおむね3〜5年ごとに見直すよう努めることとされている。

2.施設の現状把握

施設情報と維持管理情報

対象となる資産には、取水施設、浄水場、配水池、管路、ポンプ、電気・計装設備などがある。施設ごとに寿命や更新の方法が異なるため、設備や管路区間など、管理・更新する単位で情報を整理する。

項目内容
施設情報設置場所、構造・材質、規模、設置年度
維持管理情報点検・診断結果、運転記録、修繕・事故履歴
費用情報取得費、修繕費、更新工事の実績額
供給上の役割供給先、供給範囲、代替機能の有無

施設台帳や図面の情報と、点検・修繕の記録を対応付けることで、施設の状態を継続的に把握できる。会計上の固定資産台帳だけでは劣化や運転状態を十分に把握できないため、維持管理の情報も併せて管理する必要がある。

健全度と耐用年数

健全度とは、施設が必要な機能をどの程度維持しているかを示す評価である。使用年数だけでなく、材料、使用環境、運転条件、点検・修繕の履歴などを考慮して判断する。

埋設管路のように直接状態を確認しにくい施設では、管種や布設年度、漏水履歴、管体調査などを組み合わせて評価する。年数による区分は事業全体の見通しに役立つが、それだけで個々の施設の安全性を確認できるわけではない。

項目内容
法定耐用年数減価償却の計算に用いる、法令で定めた年数
使用可能な期間必要な機能を維持して使用できる期間
計画上の更新時期健全度や重要度などを踏まえて設定する時期

法定耐用年数は、施設の物理的な寿命や使用期限を定めたものではない。年数に達しただけで直ちに更新するとは限らず、反対に、年数に達していなくても損傷や機能不足などによって更新が必要になる場合がある。

3.更新需要と財政収支

更新需要の見通し

更新需要とは、将来必要となる施設更新の事業量や費用である。施設ごとの更新時期と費用を見積もり、年度ごとに集計することで、更新が集中する時期や必要な投資規模を把握する。

費用は、過去の取得額をそのまま用いるのではなく、現在の工事単価や更新内容を踏まえて見積もる。長期の見通しでは物価変動も考慮し、耐震性能の向上や仮設設備など、更新に伴って必要となる費用も確認する。

また、現在と同じ規模の施設をすべて更新することが適切とは限らない。将来の水需要を踏まえ、施設の統廃合や規模の適正化を検討する一方、災害時の対応や工事中の供給に必要な能力も確保する必要がある。

財政収支の見通し

更新需要を把握することと、その費用を賄う資金を確保することは異なる。財政収支の検討では、更新費用に加え、料金収入、日常の維持管理費、借入れと返済などを見込み、将来の経営状態と資金の過不足を確認する。

公営企業会計では、収益的収支で日常の事業運営に伴う収益・費用を、資本的収支で施設整備や企業債の借入れ・元金返済などを整理する。損益と現金の動きは一致しないため、黒字かどうかだけでなく、資金残高や企業債残高の推移も確認することが重要である。

資金が不足する場合は、経営の効率化や料金水準、活用可能な財源を検討するとともに、更新時期や施設規模などを見直す。ただし、予算に合わせて必要な更新を先送りするだけでは、事故の危険性や将来の負担が増す場合がある。

上水道と工業用水道の違い

施設の状態と財政を一体的に検討する考え方は、上水道と工業用水道に共通する。一方、上水道では給水人口や生活・事業活動による需要を、工業用水道では受水企業の操業や新規立地・撤退などを踏まえて、将来の水需要を見通す。

工業用水道では、契約水量と実際の使用水量に差がある場合があり、料金収入も供給規程や契約条件によって決まる。このため、実際の使用水量の増減が、そのまま同じ割合で料金収入の増減になるとは限らない。

いずれも供給の継続が重要であるが、事故による影響は供給先によって異なる。上水道では生活や医療などへの影響を、工業用水道では生産設備の停止や操業への影響などを考慮する必要がある。

4.更新優先順位と対策

リスクを踏まえた優先順位

更新の優先順位は、古い施設から機械的に決めるものではない。故障や事故が起こる可能性と、起こった場合の影響を組み合わせてリスクを評価し、対策が必要な施設を判断する。

施設の劣化状態や故障履歴などから故障の可能性を評価し、断水範囲や代替機能などの影響と組み合わせて更新・修繕の優先順位を判断する図

例えば、同程度に劣化した設備でも、故障時に予備機へ切り替えられる場合と、供給が停止する場合では影響が異なる。代替機能の評価では、予備設備の有無だけでなく、必要な水量を確保できるか、実際に切り替えられるかも確認する。

また、事故の影響には断水だけでなく、水質への影響、道路陥没や浸水などの二次被害も含まれる。耐震性や復旧の難しさ、更新工事中の供給確保も踏まえ、実施時期を具体化する。

修繕・長寿命化・更新

修繕は、損傷や劣化した部分の機能を回復させる対策であり、更新は施設や設備を新たなものに置き換える対策である。適切な点検・修繕によって必要な機能を保ち、使用期間を延ばすことが長寿命化につながる。

ただし、長寿命化は更新を先送りすること自体を目的とするものではない。修繕で必要な機能を維持できるか、部品の調達や維持管理が継続できるかなどを確認し、更新との比較を行う必要がある。

比較する際には、当初の工事費だけでなく、運転・維持管理・修繕・更新・撤去に要する費用を含めたライフサイクルコストを考える。安全性や供給機能を確保したうえで、長期的に合理的な対策を選定する。

5.計画の実行と見直し

長期の見通しは、具体的な更新計画や経営戦略、年度ごとの事業・予算に反映させる。技術部門と財務部門が情報を共有し、資金だけでなく、職員体制や工事の実施能力も踏まえて計画することが重要である。

実施後は、点検・修繕・更新の結果を台帳に反映し、事業の進捗や実際の費用を計画と比較する。劣化の進み方、水需要、工事単価、収入などに変化があれば、更新需要と財政収支の見通しを見直す。

情報が十分にそろっていない場合も、利用できる資料と仮定を明らかにして検討を始め、点検や調査によって精度を高めていく。更新の必要性や費用負担について利用者に説明し、理解を得ながら継続的に取り組むことが、持続可能な事業運営につながる。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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