- 読み仮名
- すいあつ
- 英語表記
- Water pressure
概要
水圧とは、水が管路や水槽などの内部で、管壁や設備に作用する圧力である。水道・工業用水道施設では、配水池の水位、ポンプの運転、管路の標高や流量などによって水圧が変化する。
水圧は、水を需要者まで安定して供給するための重要な条件である。水圧が不足すると必要な水量を確保できなくなり、過大な水圧は管路や設備への負担となるため、設計・運転・維持管理の各段階で適切に管理する必要がある。
1.水圧の基本
圧力は、単位面積当たりに作用する力を表す物理量であり、単位にはPa(パスカル)が用いられる。水道施設では、一般にkPa(キロパスカル)やMPa(メガパスカル)を使用し、1MPaは1,000kPaに相当する。
水圧は、水柱の高さに換算して表すことができる。この高さを圧力水頭といい、水圧と圧力水頭には次の関係がある。
h=p/(ρg)
- h:圧力水頭(m)
- p:ゲージ圧(Pa)
- ρ:水の密度(kg/m³)
- g:重力加速度(m/s²)
水の密度を1,000kg/m³、重力加速度を9.8m/s²とすると、圧力水頭10mに相当する水圧は約0.098MPaとなる。実務では、水頭10mがおおむね0.1MPaに相当する関係を用いて、水圧と水頭を概算することが多い。
また、圧力には大気圧を基準とするゲージ圧と、絶対真空を基準とする絶対圧がある。一般的な圧力計が表示するのはゲージ圧であり、絶対圧はゲージ圧にその地点の大気圧を加えた値となる。
水道管路の圧力計で0MPaを示していても、絶対圧がゼロになっているわけではない。また、ゲージ圧が負圧となっていても、必ずしもキャビテーションが発生しているとは限らず、発生条件は絶対圧と飽和蒸気圧の関係によって判断する必要がある。
2.静水圧と標高差
静水圧は、静止した水の内部に生じる圧力である。大気に開放された水面を基準とする場合、水面から深い位置ほど水圧は高くなり、その関係は次の式で表される。
p=ρgh
- p:ゲージ圧(Pa)
- ρ:水の密度(kg/m³)
- g:重力加速度(m/s²)
- h:水面からの鉛直距離(m)
例えば、配水池の水面標高が60mで、静止した水で満たされた管路の測定地点の標高が30mの場合、標高差は30mとなる。水の密度を1,000kg/m³とすると、その地点の静水圧は約0.294MPaとなる。

自然流下方式の管路では、配水池と管路が連続した水で満たされ、流れが停止している場合、管路内の静水圧は配水池の水面標高と各地点の標高差によって決まる。したがって、同じ水面標高を基準とすれば、高い地点では圧力が低く、低い地点では圧力が高くなる。
このとき、水圧を決めるのは水面からの鉛直距離であり、管路の延長や途中の曲がり方ではない。例えば、管路が一度高い地点を通過してから低い地点へ下っていても、静止時にはそれぞれの地点の標高に応じた圧力が生じる。
また、配水池の水位が上昇すると、接続する管路の静水圧も上昇する。配水池の最高水位と最低水位では、同じ地点でも水圧が異なるため、管路や弁類の耐圧性能を検討する際には、想定される水位の範囲を考慮する必要がある。
特に標高の低い地点では、配水池の高水位時に過大な静水圧が作用しないか確認することが重要である。一方、標高の高い地点では静水圧が小さくなるため、流動時の損失によって必要な圧力を確保できなくなる場合がある。
なお、これらの静水圧の関係は、水が静止していることを前提とする。実際に水が流れている管路では、管路損失や流速なども考慮する必要がある。
3.流動時の圧力
管路内を水が流れる場合、管壁との摩擦や弁類・曲がり部などによってエネルギーが失われる。この損失を水柱の高さで表したものが損失水頭であり、主に管路の摩擦損失と局部損失に分けられる。
摩擦損失は、管路内を流れる水と管壁との摩擦によって生じ、管路の延長、管径、流速、管内面の状態などに影響される。一方、局部損失は、曲がり部、分岐部、弁類、管径変化部などで流れの状態が変化することによって生じる。
一般に、同じ管路条件で流量が増加すると流速が大きくなり、損失水頭も増加する。そのため、配水池の水位など上流側の条件が一定であれば、流量の増加によって下流側の圧力が低下する場合がある。

例えば、配水池から自然流下する管路では、需要量が少ない時間帯には損失水頭が小さく、需要量が増加すると損失水頭が大きくなる。このため、配水池の水位が同じでも、需要量によって管路内の圧力分布が変化する。
ただし、流動時の圧力は損失水頭だけで決まるものではない。管路の標高や流速の変化なども関係するため、下り勾配の管路では、エネルギーが失われていても下流側の圧力が高くなる場合がある。
例えば、標高が大きく低下する管路では、損失水頭による全水頭の減少よりも位置水頭の低下が大きければ、流速が同じ条件では下流側の圧力水頭が増加する。このため、管路の圧力分布を考える際には、標高差と損失水頭を合わせて評価する必要がある。
また、弁を絞ると、その部分の局部損失が増加する。弁の前後では圧力差が生じるが、その大きさは流量や弁の開度などによって異なり、実際の圧力変化を把握するには運転条件を考慮する必要がある。
特に工業用水道では、大口需要者の使用水量が短時間に変化すると、管路の流量や圧力分布も変化する場合がある。複数の需要者が同じ管路から受水している場合には、一部の需要者の流量変化が、他の需要者の供給圧力にも影響することがある。
4.水頭と動水勾配線
4.1 水頭の種類と全水頭
水道管路の圧力や流れの状態は、水頭を用いることで整理できる。水頭とは、水が持つ単位重量当たりのエネルギーを高さで表したものであり、位置水頭、圧力水頭、速度水頭などがある。
| 水頭の種類 | 内容 |
|---|---|
| 位置水頭 | 基準面から測定地点までの高さ |
| 圧力水頭 | 管内圧力を水柱の高さに換算したもの |
| 速度水頭 | 水の流速に対応する運動エネルギーを高さに換算したもの |
基準面からの位置水頭をz、ゲージ圧をp、平均流速をvとすると、全水頭Hは基本的に次の式で表される。
H=z+p/(ρg)+v²/(2g)
- H:全水頭(m)
- z:位置水頭(m)
- p/(ρg):圧力水頭(m)
- v²/(2g):速度水頭(m)
この式は、管路内の流れを一次元的に扱い、速度水頭の補正係数を1とする基本的な表現である。全水頭を用いることで、標高、圧力、流速の異なる地点について、水が持つエネルギーを共通の尺度で比較できる。
例えば、同じ全水頭を持つ2地点でも、標高や流速が異なれば圧力水頭は同じにならない。したがって、流動時の圧力を求める場合には、全水頭から位置水頭と速度水頭を考慮する必要がある。
4.2 動水勾配線とエネルギー線
動水勾配線(HGL:Hydraulic Grade Line)は、管路の各地点における位置水頭と圧力水頭の和を結んだ線である。一方、エネルギー線(EGL:Energy Grade Line)は、これに速度水頭を加えた全水頭を示す線である。
HGL=z+p/(ρg)
EGL=HGL+v²/(2g)
したがって、エネルギー線は動水勾配線よりも速度水頭に相当する高さだけ上方に位置する。一定管径で流量が変化しない管路では、平均流速が一定となるため、両者の高さの差も一定となる。

管路内の圧力水頭は、動水勾配線と管中心の標高との差として表される。動水勾配線の高さそのものが圧力水頭ではなく、管路の位置との関係で圧力が決まることに注意が必要である。
例えば、動水勾配線の標高が50mで、管中心の標高が30mの場合、その地点の圧力水頭は20mとなる。一方、管中心の標高が45mの場合には、同じ動水勾配線の高さでも圧力水頭は5mとなる。
管路内では、流れに伴う摩擦損失や局部損失によって全水頭が減少する。ポンプなどによるエネルギーの供給がない場合、エネルギー線は流れの方向に低下し、一定管径で流速が一定の区間では動水勾配線もこれに沿って低下する。
一方、ポンプが設置された場合には、ポンプによって水にエネルギーが与えられ、その揚程に応じて全水頭が増加する。管径が変化する場合には流速も変化するため、動水勾配線とエネルギー線の間隔も変化する。
また、動水勾配線が管中心より低い位置になると、その地点のゲージ圧は負圧となる。このような状態では、条件によって空気の吸込みや溶存気体の遊離などが生じるおそれがあるため、管路設計では水位変動や流量変化を考慮して圧力分布を確認する必要がある。
動水勾配線とエネルギー線を用いることで、管路の高低差、圧力分布、損失水頭などを視覚的に把握できる。特に自然流下方式では、配水池の水位と管路の縦断形状を合わせて検討することが重要である。
5.水圧の測定と監視
水道・工業用水道施設では、ポンプの吸込・吐出側、送配水管路、減圧弁の前後などに圧力計を設置し、運転状態を確認する。測定された圧力は、単独の数値だけで判断するのではなく、流量や配水池水位などと合わせて評価することが重要である。
圧力は測定地点の標高によって異なるため、離れた地点の測定値を比較する場合には、それぞれの測定高さを考慮する必要がある。また、圧力計の設置高さと管中心の高さが異なる場合には、その差によって測定値が変わることにも注意する。
例えば、同じ管路の上流側と下流側に圧力計を設置している場合、両地点の圧力差がそのまま損失水頭を示すとは限らない。管路の標高差や流速の違いなども考慮し、必要に応じて水頭に換算して比較することが重要である。
また、配水池から自然流下する管路では、配水池水位、管路流量、各地点の圧力の関係を把握しておくことで、通常時と異なる圧力変化を発見しやすくなる。需要量が増加して圧力が低下する場合と、配水池水位の低下によって圧力が低下する場合では、確認すべき運転条件が異なる。
圧力が通常より低下した場合には、需要量の増加、ポンプの運転状態、弁の開度異常、管路の漏水などが考えられる。一方、圧力が上昇した場合には、流量の減少や弁の閉鎖、ポンプの運転状態の変化などを確認する。
ただし、圧力変化だけで原因を特定することはできない。複数地点の圧力計や流量計の測定値、ポンプ・弁の操作記録などを照合し、設備の異常と計測機器の不具合を区別する必要がある。
また、ポンプの急停止や弁の急操作などによって生じる短時間の圧力変動は、通常の運転データでは十分に把握できない場合がある。水撃作用による最大・最小圧力を確認する場合には、現象に応じた応答速度と記録間隔を持つ計測方法が必要である。
6.水道・工業用水道における水圧管理
水道施設では、需要者に必要な水圧を確保するとともに、管路や設備に過大な圧力が作用しないよう管理する必要がある。水圧が不足すると給水量の低下や供給支障につながり、過大な水圧は漏水量の増加や設備への負担の原因となる。
水道施設の技術的基準を定める省令では、配水管から給水管に分岐する箇所について、原則として最小動水圧150kPa以上、最大静水圧740kPa以下とする条件が定められている。ただし、給水に支障がない場合の例外規定があり、これらの数値を工業用水道に一律に適用するものではない。
配水圧力の調整には、配水池の水位管理、ポンプの運転制御、減圧弁の設置、配水区域の分割などが用いられる。管路の標高差が大きい場合には、低い地点での過大圧力と、高い地点での低水圧の双方に注意する必要がある。
管路や弁類などの設備を設計・選定する際には、通常運転時の圧力だけでなく、静止時の最大圧力やポンプ停止・弁操作に伴う過渡的な圧力変動も考慮する。特に水撃作用による急激な圧力上昇や負圧は、管路や設備の損傷につながる場合があるため、通常の流動時の圧力とは区別して評価する必要がある。
また、水圧は漏水の発生状況にも関係する。同じ漏水箇所であれば、一般に作用する圧力が高いほど漏水量が増加するため、必要な供給圧力を確保しながら過大な圧力を抑えることが、漏水量の低減にもつながる。
工業用水道では、需要者の使用水量が大きく変化すると、管路損失や供給圧力が変動する場合がある。特に複数の需要者へ共通の管路から供給している場合には、一部の需要者の急激な流量変化が、他の需要者の供給圧力にも影響することがある。
例えば、大口需要者が受水弁を急に開くと、流量の急増によって管路損失が増加し、他の需要者の供給圧力が低下する場合がある。反対に、受水弁を急に閉じると流量が減少し、定常状態の圧力分布が変化するだけでなく、操作条件によっては水撃作用による急激な圧力変動が生じるおそれがある。
このため、工業用水道では、供給条件に応じた適切な水圧を確保するとともに、需要者の流量変動を把握し、必要に応じて弁操作の方法や運転管理について調整することが重要である。
また、管路の老朽化や設備の劣化が進むと、圧力変動による負担が施設の健全性に影響する場合がある。管路や弁類の点検・更新を検討する際には、経過年数や劣化状況だけでなく、実際の運転圧力や圧力変動の状況も把握しておくことが望ましい。
水圧管理では、単に圧力計の指示値を一定に保つことだけが目的ではない。配水池水位、管路流量、管路の標高、設備の耐圧性能などを総合的に考慮し、安定した供給と施設の安全性を両立させることが重要である。

