逆止弁

読み仮名
ぎゃくしべん
英語表記
Check valve
目次

概要

逆止弁(チェックバルブ)とは、管路内の水を一方向に流し、反対方向への逆流を自動的に防止する弁である。ポンプの吐出側や逆流を防止する必要がある管路に設置され、ポンプや配管設備を保護する役割を持つ。

逆止弁は、水の流れや圧力差によって弁体が自動的に開閉するため、通常は外部からの操作を必要としない。ただし、逆止弁の閉鎖によって水撃作用が発生する場合もあるため、管路条件に適した形式と閉鎖特性を選定することが重要である。

1.逆止弁の基本構造と作動原理

逆止弁は、主に弁箱、弁体、弁座などで構成される。弁体は水の流れによって開き、流量の減少や逆圧によって閉じることで、逆流を防止する。

通常の流れ(順流)があるときは、上流側の圧力によって弁体が開き、水が下流側へ流れる。一方、ポンプ停止などによって流量が減少すると弁体が閉じ始め、下流側から逆圧が作用すると弁体が弁座に押し付けられて流路を遮断する。

逆止弁は、水の流れに応じて自動的に開閉する弁であり、制水弁のように任意の開度で流量を調整したり、操作によって止水したりすることを目的とした弁ではない。

スイング式逆止弁について、順流時には弁体がヒンジを中心に回転して開き、逆圧時には弁座に密着して逆流を防ぐ仕組みを示す比較図

2.逆止弁の種類と構造

逆止弁には、弁体の動き方や閉鎖機構によって複数の形式がある。代表的な構造形式にはスイング式とリフト式があり、それぞれ流路形状や圧力損失、作動特性が異なる。

形式主な特徴
スイング式弁体がヒンジを中心に回転して開閉する。流路の曲がりが比較的小さく、一般に圧力損失が小さい。
リフト式弁体が案内機構に沿って上下して開閉する。流路が曲がる構造のため、一般にスイング式より圧力損失が大きい。

2.1 スイング式逆止弁

スイング式は、弁体がヒンジを中心に回転する構造である。順流時には水の流れによって弁体が押し開かれ、流量が減少すると弁体が閉じ始め、逆圧が作用すると弁座に密着する。

流路が比較的直線的で、圧力損失を小さくしやすいことから、ポンプ吐出側などで広く使用される。ただし、ポンプ停止時に弁体の閉鎖が遅れると、逆流が生じた後に弁体が急閉鎖し、水撃作用が発生する場合がある。

2.2 リフト式逆止弁

リフト式は、弁体が案内機構に沿って上下する構造である。順流時には弁体が圧力差によって持ち上がり、弁座の開口部を通過した水が弁体の周囲を流れて下流側へ向かう。

一般的な水平配管用リフト式では、流量が減少すると弁体は自重によって下降し、下流側から逆圧が作用すると弁座に押し付けられて逆流を防ぐ。スイング式と異なり、弁体が直線的に移動することが特徴である。なお、ばね付きの形式では、ばねの力も閉鎖に作用する。

リフト式は、弁体の上下動を確実に行える設置姿勢や、弁を開くために必要な圧力差を考慮する必要がある。また、流路が曲がるため、圧力損失にも注意する。

リフト式逆止弁について、順流時には弁体が案内機構に沿って上昇し、逆圧時には下降して弁座を閉じる仕組みを示す比較図

2.3 その他の形式と閉鎖特性

逆止弁には、ばねの力を閉鎖に利用するばね式や、閉鎖時の衝撃を小さくすることを目的とした無衝撃式(ノンスラム式)もある。これらはスイング式やリフト式のような弁体の運動形式とは分類の観点が異なり、構造や作動特性は製品によって異なる。

また、ポンプ停止時の水撃作用への対策として、急閉式や緩閉式の逆止弁が使用される。急閉式は大きな逆流が生じる前に弁体を閉じることを目的とし、緩閉式には閉鎖直前の動作やバイパス流量を制御して圧力変動を緩和する形式がある。

ただし、急閉式と緩閉式のどちらが適しているかは、閉鎖時間だけでは判断できない。 ポンプ特性や管路条件、逆流が生じるタイミングなどを考慮して選定する必要がある。

3.ポンプ停止時の逆止弁の挙動と水撃作用

ポンプが停止すると、回転速度の低下に伴って揚程が減少し、吐出流量も減少する。このとき、送水先との水頭差などによって流れが逆向きになろうとするため、逆止弁は適切なタイミングで閉鎖する必要がある。

3.1 逆止弁の閉鎖タイミング

逆止弁の閉鎖タイミングは、ポンプ停止時の圧力変動に大きく関係する。

順流が減少する過程で弁体が閉じ始め、流量がほぼゼロとなる前後に閉鎖できれば、大きな逆流が生じる前に流路を遮断できる。一方、弁体の閉鎖が遅れて逆流が発生すると、逆流している水が弁体の閉鎖によって急停止し、圧力上昇を生じる場合がある。

特に、逆流速度が大きくなってから弁体が急閉鎖すると、大きな水撃圧が発生するおそれがある。このため、逆止弁には単に逆流を防止するだけでなく、ポンプ停止時の流量変化に適した閉鎖特性が求められる。

3.2 水撃作用との関係

逆止弁の閉鎖による水撃圧は、閉鎖時の逆流速度、弁体の動作特性、管路延長、管種、ポンプ特性などによって変化する。したがって、弁体を早く閉じれば必ず水撃作用を防止できるわけではなく、ゆっくり閉じれば必ず圧力上昇が小さくなるわけでもない。

また、ポンプの急停止では、逆止弁が閉じる前から吐出側の圧力低下が発生することがある。逆止弁の閉鎖に伴う圧力上昇を抑えても、圧力低下や水柱分離など、別の水撃現象への対策が必要になる場合がある。

逆止弁の閉鎖特性は、ポンプ停止時の管路全体の圧力変動を考慮して選定することが重要である。

ポンプ停止後の流量変化について、流量がゼロ付近で逆止弁が閉鎖する場合と、逆流発生後に急閉鎖して水撃圧が生じるおそれがある場合を比較したグラフ

4.逆止弁の選定と設置上の注意点

4.1 形式と圧力損失

逆止弁の選定では、口径、使用圧力、流量、設置姿勢などの基本条件を確認する。また、弁体が開いた状態でも流路に抵抗が生じるため、圧力損失を考慮する必要がある。

ポンプ設備では、逆止弁の圧力損失が大きいと、必要な揚程や運転動力に影響する。また、弁体を開くためには一定の圧力差が必要であり、流量が不足すると弁体が十分に開かず、振動や異常音が発生する場合がある。このため、通常運転時だけでなく、低流量運転時も含めて弁の作動特性を確認する。

4.2 ポンプ特性と水撃対策

ポンプ吐出側の逆止弁では、通常停止だけでなく、停電などによる急停止時の挙動も考慮する。特に、高揚程のポンプや長距離送水管路では、流量の減少から逆流開始までの時間と、逆止弁の閉鎖タイミングが重要になる。

水撃作用による大きな圧力変動が想定される場合は、必要に応じて水撃解析を行い、逆止弁の閉鎖特性を検討する。また、逆止弁だけで対策が難しい場合には、フライホイールやサージタンク、エアチャンバーなどの対策設備との組合せを検討する。

4.3 設置位置と施工上の注意

逆止弁は、ポンプの吐出側など、逆流を防止する必要がある位置に設置する。設置時には弁本体に表示された流れ方向を確認し、逆向きに取り付けないよう注意する。

また、形式によって水平配管・垂直配管などの設置条件が異なるため、メーカーの仕様を確認する。点検や部品交換を考慮して、弁蓋の開放スペースや必要な止水設備、作業スペースも確保する。

5.運転・維持管理上の注意点

5.1 逆流防止機能の確認

逆止弁は通常、自動的に作動するため、日常の運転操作で弁体の動きを直接確認する機会が少ない。しかし、弁体や弁座の摩耗、異物のかみ込み、腐食などによって閉鎖が不完全になると、逆流を十分に防止できなくなる場合がある。

特に、弁座に異物が挟まると、弁体が閉じても隙間から水が漏れることがある。点検時には、弁体や弁座の損傷、付着物、可動部の摩耗・固着などを確認する。

5.2 異常音・振動への対応

逆止弁の作動時に大きな衝撃音が発生する場合は、弁体の急閉鎖や逆流が生じている可能性がある。また、通常運転中に連続的な振動や異音が発生する場合は、流量不足による弁体の不安定な動きや、可動部の異常などが考えられる。

このような異常が発生した場合は、逆止弁だけでなく、ポンプの運転状態や流量、圧力変動なども併せて確認する。特に、ポンプ停止時の衝撃音は水撃作用に関係する場合があるため、停止前後の運転状況を把握することが重要である。

5.3 点検・更新時の注意

逆止弁は、長期間使用すると弁体や弁座、軸受などが劣化し、開閉動作や止水性能が低下する場合がある。点検や更新では、外観の腐食だけでなく、内部部品の摩耗や作動状態も確認する。

また、逆止弁は逆流防止を目的とする弁であり、点検作業時の確実な止水を保証するものではない。分解や部品交換を行う際には、必要な制水弁などで流路を隔離し、残圧を解放して安全を確保する。

逆止弁の維持管理では、逆流防止機能を維持するとともに、設備の運転条件に適した作動状態が保たれているかを確認することが重要である。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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