- 読み仮名
- ぽりえんかあるみにうむ
- 略称
- PAC
- 英語表記
- Polyaluminum Chloride
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
概要
ポリ塩化アルミニウム(PAC)は、上水道や工業用水道の浄水処理などで使用される、アルミニウム系の無機高分子凝集剤である。水中の微細な濁質粒子を凝集させ、沈殿によって除去しやすくするために用いられる。
1.凝集沈殿処理の流れ
原水中の微細な濁質粒子は、そのままでは沈みにくいため、凝集剤を用いて沈降しやすいフロックを形成する。
一般的な凝集沈殿処理では、原水にPACを注入し、フラッシュミキサーで急速に混和する。その後、フロキュレーターで緩やかに攪拌してフロックを成長させ、沈殿池で沈降させることにより、上澄み水と分離する。

2.PACの特性と凝集原理
凝集の仕組み
原水中の微細な濁質粒子の多くは、表面が負に帯電しており、粒子同士が電気的に反発することで水中に分散している。
PACを加えると、正電荷を持つアルミニウム種が粒子表面に作用し、電気的な反発力を弱める。これを電荷中和という。反発力が弱まると粒子同士が接近し、粒子間に働くファンデルワールス力(引力)によって結び付きやすくなる。
また、PACの加水分解によって生成する水酸化アルミニウムが、粒子を取り込む作用も凝集に寄与する。こうして形成されたフロックは大きくなり、沈降しやすくなる。

PACの組成と性状
PACは、アルミニウム、塩化物イオン、水酸基などから構成され、複数のアルミニウム化学種を含む薬品である。一般的な水道用PACは、無色から淡黄褐色の透明な液体で、酸性を示す。
PACの特性を表す代表的な指標には、酸化アルミニウム濃度と塩基度がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Al₂O₃濃度 | 製品中のアルミニウム含有量をAl₂O₃に換算した値 |
| 塩基度 | アルミニウムに対する水酸基の割合を示す指標 |
酸化アルミニウム濃度は、製品中に酸化アルミニウムの粉末が含まれていることを意味するものではない。アルミニウム含有量を共通の基準で表したものである。
塩基度とは
塩基度は、PACの化学的な特性を示す重要な指標である。アルミニウムに対する水酸基(OH)のモル比を用いて、一般に次のように表される。
塩基度(%)=(OH/Alのモル比)÷ 3 × 100
塩基度は、PACの製造段階における塩基化の度合いを示す指標であり、アルミニウムの化学形態や凝集特性に関係する。ただし、塩基度だけで凝集性能の優劣が決まるわけではなく、原水の性状や凝集条件によって評価する必要がある。
3.PACの種類と品質規格
一般PACと高塩基度PAC
PACには、一般的な製品のほか、塩基度を高めた製品がある。高塩基度PACは、一般PACと比較して凝集時のアルカリ度消費が小さい傾向があり、原水条件によっては凝集性能の改善やpH調整に使用する薬品量の低減が期待できる。
ただし、その効果は原水水質によって異なるため、製品の特性を確認して選定する必要がある。
また、アルミニウム系凝集剤には硫酸アルミニウムもある。PACは製造段階で一部が加水分解・重合している点に特徴があり、一般に硫酸アルミニウムより凝集時のアルカリ度消費が小さい。
PACの品質規格
水道用PACには、日本産業規格のJIS K 1475と、日本水道協会規格のJWWA K 154がある。
JWWA K 154:2016の主な品質規格は、次のとおりである。
| 項目 | 規格値 |
|---|---|
| 外観 | 無色~黄味がかった薄い褐色の透明な液体 |
| 比重(20℃) | 1.19以上 |
| Al₂O₃濃度 | 10.0~11.0% |
| 塩基度 | 45~75% |
| pH(10g/ℓ溶液) | 3.5~5.0 |
| 硫酸イオン | 3.5%以下 |
このほか、凝集性能なども規定されている。実際の購入仕様書では、一般PACや高塩基度PACなど、使用する製品に応じて塩基度の範囲を限定する場合がある。
なお、水道用薬品は主成分の品質だけでなく、薬品由来の不純物が処理水の安全性に与える影響についても確認する必要がある。
保管・取扱い上の注意
PACは酸性で腐食性があるため、保管や取扱いには耐食性のある材料を使用する。また、他の薬品との混合や不適切な保管条件によって析出物が発生し、配管などの閉塞につながる場合がある。
取扱いに当たっては、製品仕様書や安全データシート(SDS)に従って適切に管理することが重要である。

