- 読み仮名
- すいどうほう
- 英語表記
- Water Supply Act
概要
水道法は、清浄で豊富、低廉な水の供給を図り、公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与することを目的とする法律である。水道施設の基準、水質管理、事業の認可、給水条件、維持管理などを定めている。
安全で安定した給水には、浄水処理に加え、送配水過程の水質管理、施設の維持管理、異常時の対応体制が必要である。
本記事では、2026年10月時点の法令に基づき、主に水道事業に適用される規定を中心に解説する。
1.水道法の目的
水道法第1条は、水道の布設と管理を適正かつ合理的に行い、水道の基盤を強化することで、清浄で豊富、低廉な水の供給を図ることを目的としている。
1.1 清浄で豊富、低廉な水の供給
「清浄」は衛生上安全な水、「豊富」は生活や事業活動に必要な水量の確保を示す。「低廉」は、施設の安全性と安定供給を確保しながら、効率的に事業を運営することを意味する。
施設の更新を先送りすると、一時的な支出は抑えられても、漏水や緊急修繕による費用が増加する場合がある。事業運営では、短期的な費用だけでなく、長期的な維持管理費も考慮する必要がある。
1.2 公衆衛生と生活環境
安全な水の供給は、飲用、調理、洗濯、入浴、医療などの衛生的な生活を支える。水質検査や施設管理を継続し、供給過程を通じて安全性を確保する必要がある。
1.3 水道の基盤強化
水道の基盤には、施設のほか、人材、技術、経営などが含まれる。人口減少、施設の老朽化、人材不足などに対応するため、2018年の法改正で基盤強化に関する制度が整備され、主な規定が2019年10月1日に施行された。
施設更新では、将来の需要や災害時の供給能力を踏まえ、施設規模の適正化、事業者間の連携、管理体制の確保などを検討する。

2.水道法で定める水道の種類
水道法第3条は、導管その他の工作物によって人の飲用に適する水を供給する施設の総体を「水道」と定義している。ただし、臨時に施設されたものは除かれる。
適用される規定は、供給先、水源、施設規模などによって異なる。
2.1 水道事業と水道用水供給事業
水道事業は、一般の需要に応じて水道により水を供給する事業である。ただし、給水人口が100人以下のものは除かれる。
水道用水供給事業は、水道事業者に、その事業のための用水を供給する事業である。ただし、水道事業者または専用水道の設置者が他の水道事業者に分水する場合は除かれる。
県などが浄水を市町村の水道事業者へ供給する事業は水道用水供給事業に当たり、市町村が家庭や事業所に給水する事業は水道事業に当たる。
2.2 簡易水道事業
簡易水道事業は、水道事業のうち、計画給水人口が5,000人以下のものである。一般の水道事業と同様に、水質基準や衛生上の措置に関する規定が適用される。
2.3 専用水道と簡易専用水道
専用水道は、寄宿舎、社宅、療養所等の自家用水道などで、100人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの、または人の生活に使用する水の1日最大給水量が20m³を超えるものが基本となる。
ただし、他の水道から供給される水のみを水源とし、地中・地表にある口径25mm以上の導管の全長が1,500m以下、かつ水槽の有効容量の合計が100m³以下の施設は、専用水道から除かれる。
簡易専用水道は、水道事業から供給される水のみを水源とし、受水槽の有効容量の合計が10m³を超える水道である。ただし、水道事業用の水道と専用水道は除かれる。
| 種類 | 主な位置付け |
|---|---|
| 水道事業 | 一般の需要に応じて水を供給する事業 |
| 水道用水供給事業 | 水道事業者に事業用の水を供給する事業 |
| 簡易水道事業 | 計画給水人口5,000人以下の水道事業 |
| 専用水道 | 居住者数・生活用水量などで判断する自家用水道等 |
| 簡易専用水道 | 水道事業からの水を受け、受水槽の有効容量の合計が10m³を超える水道 |
簡易専用水道の容量要件は「10m³を超える」であり、10m³ちょうどは含まれない。ただし、対象外の小規模受水槽にも自治体の条例等による管理規定が適用される場合がある。

3.事業の認可と給水開始の手続き
水道事業の経営には認可が必要である。また、一定の施設を新設・増設・改造して使用する場合には、給水開始前の届出と検査が必要となる。
3.1 事業の認可
水道法第6条は、水道事業の経営に認可を必要としている。経営主体は原則として市町村であり、市町村以外の者が経営する場合には、給水区域に含まれる市町村の同意が必要となる。
認可では、需要に適合した計画、施設基準への適合、供給条件などを審査する。水道用水供給事業についても、第26条以下に認可の規定がある。
3.2 事業計画の変更
給水区域の拡張、計画給水人口・計画給水量の増加、水源や浄水方法の変更などでは、変更内容に応じて認可等の手続きを確認する。水道事業は第10条、水道用水供給事業は第30条に変更に関する規定がある。
3.3 給水開始前の届出と検査
第13条は、配水施設以外の水道施設または配水池を新設・増設・改造して使用する場合に、給水開始前の届出、水質検査、施設検査を求めている。検査記録の保存期間は検査日から5年間である。
工事契約上の完成検査と、給水開始前の法定検査は目的が異なる。対象となる施設では、供用開始の工程に必要な届出と検査を組み込む。
配水管工事のすべてが第13条の届出対象となるわけではないが、再通水時の洗浄・消毒や安全確認は、工事内容に応じて実施する。
4.水質基準と水質管理
水道法は、供給する水の水質基準と、その基準を継続して満たすための検査・衛生管理を定めている。
4.1 水質基準
水道法第4条に基づく水質基準は、「水質基準に関する省令」で定められている。2026年10月時点では52項目であり、健康に関する項目のほか、味、臭気、色度、濁度などが含まれる。
2026年4月1日から、PFOSとPFOAが水質基準に加わった。基準値は両物質の合計で0.00005mg/L以下(50ng/L以下)であり、PFAS全体の合計値ではない。
水質基準は改正される場合があるため、水質検査計画や委託仕様の作成時には、現行の基準項目と施行日を確認する。
4.2 定期・臨時の水質検査
第20条は、定期・臨時の水質検査と、検査記録の5年間の保存を定めている。水質検査計画は毎事業年度の開始前に策定し、検査地点、項目、頻度などを定める。
施行規則では、色、濁り、消毒の残留効果について1日1回以上の検査が求められる。その他の項目は個別の規定に従い、頻度の軽減や省略には所定の条件がある。
水源や供給水に異常があり、汚染のおそれがある場合には臨時検査を行う。結果は採水地点、時刻、施設の運転状況と合わせて評価する。
4.3 消毒などの衛生上の措置
第22条は、施設の清潔保持、汚染防止、消毒などの衛生上の措置を求めている。
給水栓における残留塩素は、通常、遊離残留塩素0.1mg/L以上、結合残留塩素0.4mg/L以上を保持する。病原生物による著しい汚染のおそれがある場合など、施行規則第17条に定める条件では、それぞれ0.2mg/L以上、1.5mg/L以上となる。
残留塩素の規定は、水質基準52項目とは別の衛生上の措置である。送配水中の塩素消費を考慮し、末端の給水栓で必要な濃度を確保する。
また、第21条は、取水場・浄水場・配水池で業務に従事する者や、これらの施設の構内に居住する者について、健康診断を定めている。
4.4 簡易専用水道の管理と検査
簡易専用水道の設置者には、第34条の2に基づく管理と、地方公共団体の機関または登録検査機関による管理の検査が求められる。
水槽の清掃と管理の検査は、それぞれ毎年1回以上、定期的に実施する。水の色、濁り、臭い、味などに異常がある場合は、必要な水質検査と汚染防止措置を行う。
5.施設基準と維持管理
水道法は、水道施設の構造・能力に関する基準と、供用後の維持・修繕、台帳整備、計画的な更新を定めている。
5.1 水道施設が備えるべき能力と構造
第5条は、原水の量・水質、地理的条件などに応じた水道施設の整備を定めている。具体的な技術要件は「水道施設の技術的基準を定める省令」による。
| 施設 | 主な役割と必要な能力 |
|---|---|
| 取水施設 | 原水を取り入れ、必要な取水量を確保する |
| 貯水施設 | 原水を蓄え、必要な貯水能力を確保する |
| 導水施設 | 原水を浄水施設へ送り、必要な通水能力を確保する |
| 浄水施設 | 原水を処理し、水質基準に適合する水をつくる |
| 送水施設 | 浄水を配水施設へ送り、必要な送水能力を確保する |
| 配水施設 | 浄水を貯留・輸送・分配し、必要な水量と水圧を確保する |
施設には必要な能力に加え、水圧や外力に耐え、汚染を防止する構造が求められる。
2026年10月1日施行の施設基準省令の改正では、災害時に給水確保が必要な医療機関や避難所等に接続する配水支管と、これに接続する一定の施設について、耐震性能の要件が見直された。対象施設では、レベル1地震動に対して健全な機能を損なわず、レベル2地震動に対しても損傷が軽微で機能に重大な影響を及ぼさない性能が求められる。
レベル1地震動は供用期間中に発生する可能性が高い地震動、レベル2地震動は設置地点で想定される最大規模の強さを有する地震動である。既設施設等には、大規模な改造まで改正後の規定を適用しない経過措置がある。
5.2 点検と修繕
第22条の2は、水道施設を良好な状態に保つための点検、維持、修繕を定めている。点検で異常が見つかった場合は、施設の状態や影響を評価し、必要な措置を講じる。
施行規則第17条の2では、一定のコンクリート構造物や道路・河川・鉄道等を架空横断する管路等について、おおむね5年に1回以上の適切な頻度で点検することが規定されている。適用対象と点検方法は施設条件に応じて確認する。
5.3 水道施設台帳
第22条の3は、水道施設台帳の作成・保管を定めている。台帳は調書と図面で構成され、施設の種類、設置年度、構造・能力、管路の口径・材質などを記録する。
台帳は、漏水修繕時の資機材手配、弁の位置確認、断水範囲の判断などに利用する。施設の変更を反映し、現場で活用できる状態に保つ必要がある。
5.4 計画的な更新
第22条の4は、水道施設の計画的な更新に努めることを定めている。施設の状態、更新需要、財政収支の見通しを踏まえ、更新時期と優先順位を検討する。
このような長期的な施設管理には、アセットマネジメントが用いられる。計画的な更新の努力義務と、必要な維持・修繕の義務は区別される。
6.給水義務と供給規程
水道法は、給水契約、供給条件、給水停止時の対応を定めている。
6.1 給水契約と常時給水
第15条第1項は、給水区域内で給水契約の申込みがあった場合、正当な理由なく拒否することを禁止している。同条第2項は、災害その他正当な理由がある場合などを除き、常時給水を求めている。
水道用水供給事業には、第31条により第15条第2項が読み替えて準用される。一方、第15条第1項の給水契約の申込みに関する規定は、そのまま準用されるものではない。
6.2 供給規程
第14条は、料金、給水装置工事の費用負担などの供給条件について、供給規程を定めることを求めている。給水装置は、配水管から分岐した給水管と、それに直結する給水用具である。
供給規程には料金の算定・徴収方法、工事費用の負担、事業者と利用者の責任などを定める。水道用水供給事業の供給条件は、適用される認可規定や受水事業者との契約等に基づいて確認する。
6.3 断水時の周知と緊急停止
第15条第2項は、給水停止に当たり、災害その他やむを得ない事情がある場合を除き、区域と期間を事前に関係者へ周知する措置を求めている。計画断水では、影響施設、応急給水、復旧後の確認なども検討する。
第23条は、供給水が人の健康を害するおそれがあると知った場合、直ちに給水を停止し、水の使用が危険であることを関係者に周知する措置を求めている。
水質基準を超過した場合の対応は、項目、濃度、健康影響などを踏まえて判断する。第23条に該当する危険を認めた場合は、原因調査の完了を待たずに必要な措置を講じる。
簡易専用水道でも、供給水が健康を害するおそれがあると知った場合には、給水停止と危険の周知を行う。
7.水道の管理体制と行政の役割
水道法は、水道事業者の技術管理体制と、行政による認可・監督等の仕組みを定めている。
7.1 水道技術管理者
第19条は、水道の管理に関する技術上の業務を担当する水道技術管理者の配置を求めている。水道技術管理者は法定の事務に従事し、その事務を行う他の職員を監督する。

| 主な職務 | 実務で確認すること |
|---|---|
| 施設の検査・点検 | 施設基準への適合、点検結果、必要な措置 |
| 給水開始前の検査 | 水質・施設検査と記録 |
| 給水装置の検査 | 構造・材質の基準への適合 |
| 水質検査 | 検査結果、異常時の調査・対応 |
| 健康診断・衛生管理 | 法定対象者の健康診断、清潔保持、消毒等 |
| 水道施設台帳 | 調書・図面の整備と更新 |
| 給水停止 | 緊急停止や命令による停止への対応 |
水道技術管理者は、担当職員から検査・運転情報の報告を受け、必要な判断と指示・監督を行う。異常への対応後は、改善状況と実施記録を確認する。
資格要件は法令に定められ、地方公共団体の水道事業では政令の基準を参酌して条例で定める。法定の業務委託に伴う選任の特例もある。
7.2 業務委託と管理責任
水質検査や設備保守を外部委託する場合は、業務範囲、異常時の報告先、対応判断、記録、緊急連絡体制を明確にする。
第24条の3に基づく技術上の業務の委託は、一般的な作業委託とは異なり、受託水道業務技術管理者の配置や委託範囲に応じた規定が適用される。
また、第24条の2は、水道事業者に水質や事業運営等に関する情報の提供を求めている。
7.3 国・都道府県等の役割と所管
2024年4月1日、水道行政の所管は厚生労働省から国土交通省と環境省へ移管された。主に水道の整備・管理や事業の基盤強化を国土交通省が、水質・衛生を環境省が担当する。
| 主体 | 主な役割 |
|---|---|
| 国土交通省 | 水道の整備・管理、事業の基盤強化 |
| 環境省 | 水質基準、水質・衛生に関する制度 |
| 都道府県等 | 権限区分に応じた認可、指導、監督等 |
| 水道事業者等 | 各事業に適用される規定に従った供給・管理 |
都道府県は行政庁として監督を担うほか、水道用水供給事業の経営主体となる場合もある。申請・届出では、現行法令に基づく様式と提出先を確認する。
2025年7月1日施行の改正では、日本下水道事業団が協定に基づいて被災した水道施設の復旧工事を行う制度や、緊急の配水管調査・復旧に必要な土地への立入り等に関する特例が整備された。いずれも法令上の要件に従って適用される。

