水質基準に関する省令

読み仮名
すいしつきじゅんにかんするしょうれい
英語表記
Ministerial Ordinance on Water Quality Standards
目次

概要

水質基準に関する省令は、水道法第4条第2項に基づき、水道により供給される水が適合しなければならない水質基準を定めた省令である。基準項目と基準値を定めるものであり、水質検査の義務や検査頻度をすべて規定しているわけではない。

2026年10月時点の水質基準は52項目である。2026年4月1日から「PFOS及びPFOA」が水質基準に加わっており、従来の51項目という説明とは区別する必要がある。

1.水質基準に関する省令とは

水道法第4条第1項は、病原生物による汚染、有害物質、色・濁り・臭気などについて、供給水が備えるべき要件を定めている。その具体的な基準項目と基準値を、第2項の委任を受けた水質基準に関する省令が定めている。

省令の法令番号は「平成15年厚生労働省令第101号」である。制定当時の名称が法令番号に残っているが、現在、水質基準に関する事務を所管するのは環境省である。

法令・告示主な役割
水道法第4条供給水に求める水質の要件と、具体的な基準を省令で定める根拠を規定する。
水質基準に関する省令水質基準の項目・基準値を定め、検査方法を環境大臣が定める方法に委ねる。
水道法第20条・水道法施行規則第15条定期・臨時の水質検査の義務と、検査項目、回数、採水場所、水質検査計画などを規定する。
検査方法告示(平成15年厚生労働省告示第261号)基準項目ごとの具体的な検査方法を定める。
水道法第4条から水質基準に関する省令と検査方法告示へ、第20条から施行規則第15条へつながる関係。基準項目・基準値と検査の実施事項を分けて示す。

このように、基準は「供給水が満たすべき条件」、検査は「その条件に適合しているかを確かめる行為」である。基準値を調べる場合と、検査頻度や方法を調べる場合では、確認すべき規定が異なる。

2.水質基準項目と基準値

水質基準には、健康への影響に関わる項目に加え、色、濁り、臭気、味など、水の性状に関わる項目も含まれる。いずれも省令に定められた水質基準であり、性状に関する項目だけを任意の目安として扱うものではない。

実務では、微生物に関する指標、無機物質・重金属、有機化学物質、消毒副生成物、性状に関する項目などに整理すると、汚染原因と管理方法を結び付けやすい。ただし、これは理解のための整理であり、法令上の正式な分類ではない。

水質基準52項目の代表例を、微生物の指標、無機物質・重金属、有機化学物質、消毒副生成物、性状に整理した図。法令上の正式な分類ではない。
代表的な項目・基準値水質管理上の意味
一般細菌:検水1mLで形成される集落数が100以下衛生状態を把握する指標の一つである。検出された一般細菌のすべてが病原菌という意味ではない。
大腸菌:検出されないことふん便汚染を把握する重要な指標である。検出時は汚染原因や処理・消毒の状態を確認する必要がある。
鉛及びその化合物:鉛の量に関して0.01mg/L以下原水だけでなく、給水管などからの溶出にも注意する項目である。
総トリハロメタン:0.1mg/L以下消毒に伴って生成する物質を管理する項目であり、4種類のトリハロメタンの合計量で評価する。
pH値:5.8以上8.6以下水の酸性・アルカリ性を示す。凝集処理や腐食などとも関係するが、処理工程の管理値とは区別する。
色度:5度以下/濁度:2度以下着色や濁りの程度を示す。原水変動、処理状態、配水過程での水質変化を把握する手掛かりとなる。

基準に適合することと、処理工程を安定して運転することは同じではない。例えば、供給水の濁度基準である2度を、そのままろ過水の運転管理目標とするのではなく、処理方式や微生物リスクに応じた管理目標を設定する必要がある。

3.水質管理目標設定項目との違い

水道水質の管理では、水質基準のほかに「水質管理目標設定項目」と「要検討項目」が用いられる。これらは、設定の目的と法的な位置付けが異なる。

区分位置付けと実務上の取扱い
水質基準項目(52項目)水道法に基づき、供給水が適合しなければならない基準である。法令に従って水質検査を行い、適合状況を確認する。
水質管理目標設定項目(26項目)水質管理上留意すべき項目として、通知により目標値が設定されている。水質基準と同じ適合義務を課すものではなく、原水や処理の状況に応じた管理に活用する。
要検討項目(46項目)法令上の水質基準ではなく、毒性評価が定まらない、浄水中の存在量が明らかでないなど、知見の収集・検討を要する項目である。必要に応じて実態把握を行い、新たな知見を管理に反映する。

項目数は2026年10月時点のものである。水質基準と水質管理目標設定項目には、濁度など共通する項目もあり、互いに完全に別の物質群を表すわけではない。

また、残留塩素のように、水質管理目標とは別に法令上の管理規定がある項目にも注意が必要である。残留塩素は52項目の水質基準には含まれないが、水道法第22条に基づく施行規則第17条で、給水栓における消毒の残留効果の保持が義務付けられている。

4.水質検査との関係

水道法第20条は、水道事業者に定期・臨時の水質検査を義務付けている。水道法施行規則第15条は、その実施に必要な事項を定めており、基準項目の検査は給水栓での採水を原則とするが、項目や条件によって例外がある。

水質検査計画は、毎事業年度の開始前に策定するものである。検査項目、採水場所、検査回数とその理由、臨時検査の実施条件、検査の委託などを整理し、施行規則第17条の5に基づいて事前に情報提供する。

定期検査には、毎日行う色・濁り・消毒の残留効果の検査と、基準項目について定められた回数で行う検査がある。基準項目の検査回数は一律ではなく、過去の結果などによる回数の減少や検査の省略にも条件があるため、計画作成時には現行の施行規則を確認する必要がある。

臨時検査は、供給水が水質基準に適合しないおそれがある場合に行うものである。水源の汚染事故や水質の急変などが生じたときは、定期検査の日程を待たず、状況に応じた項目を検査する。

検査結果は、基準値との比較に加え、過去の傾向、原水や処理工程の状態、配水・給水設備の状況と合わせて評価する。異常時には原因調査と必要な措置を進め、再検査だけで対応を終えないことが重要である。

基準超過時の対応は、項目や原因、健康への影響などによって異なる。ただし、供給水が人の健康を害するおそれがあることを知った場合には、水道法第23条により、直ちに給水を停止し、関係者に危険を周知しなければならず、保護措置を再検査の結果が出るまで先送りしてはならない。

5.浄水処理・水質管理における活用

水質基準は、検査結果の判定だけでなく、浄水処理方法の選定や運転管理の前提となる。原水に含まれる物質とその変動を把握し、必要な処理性能と管理上の余裕を考慮して、処理工程を組み合わせることが基本である。

凝集沈殿・ろ過は主として濁質などの除去に、消毒は微生物の制御に役立つ。一方、水に溶けた化学物質は同じ方法で一様に除去できるわけではなく、対象物質に応じて活性炭処理などの適用を検討する必要がある。

消毒では、必要な消毒効果を確保するとともに、消毒副生成物の生成にも配慮する。単に塩素注入量を減らすのではなく、副生成物のもとになる物質の除去、注入位置・注入量・接触時間、配水過程の滞留などを合わせて管理することが重要である。

水源、浄水処理、配水、給水栓へ至る水の流れ。工程の監視・運転調整と、給水栓での水質検査による適合確認を区別し、結果を水質管理へ反映する。

水質は浄水場の出口で管理が完結するものではなく、配水・給水過程でも変化する。水源から給水栓までを一体として監視し、検査結果を処理条件や施設管理に反映することで、基準に適合する水を安定して供給する。

6.法令改正と最新基準の確認

水質基準は、健康影響に関する科学的知見や検出状況などを踏まえて見直される。2025年6月30日に公布された改正により、2026年4月1日から「PFOS及びPFOA」が水質管理目標設定項目から水質基準項目に移行した。

基準値は、PFOSとPFOAの量の和として0.00005mg/L以下、すなわち50ng/L以下である。両物質を合わせて1項目と数えるものであり、PFASと総称される物質全体の合計量に対する基準ではない。

この移行により、供給水の基準適合と法令に基づく水質検査が必要になった。PFOS及びPFOAの定期検査は原則としておおむね3か月に1回以上であり、回数の減少や省略については法令上の条件に照らして判断する必要がある。

実務では、水質検査計画、検査委託の内容、分析体制、原水と浄水の濃度把握などを見直す。通常の凝集沈殿・砂ろ過・塩素処理による十分な除去を期待せず、必要に応じて粒状活性炭処理などを検討し、処理効果と交換時期を確認することが重要である。

法令改正を確認する際は、公布日と施行日を区別し、現在適用される条文・別表・検査方法を確認する。設計指針や用語辞典は技術的な理解に役立つが、掲載時点の項目数や基準値をそのまま現行値として使用しないことが必要である。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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