水道施設の技術的基準を定める省令

読み仮名
すいどうしせつのぎじゅつてききじゅんをさだめるしょうれい
英語表記
water facility technical standards
目次

概要

水道施設の技術的基準を定める省令とは、水道法第5条第4項に基づき、水道施設が備えるべき構造や機能などの技術的要件を定めた法令である。平成12年厚生省令第15号として制定され、取水施設から配水施設まで、水道施設の設計・整備における基本的な基準となっている。

この省令では、安定給水、構造安全性、耐震性、衛生上の安全性など、水道施設に共通する要件に加え、施設の種類に応じた技術的要件が定められている。

水道施設の設計では、省令への適合を前提として、水道施設設計指針などの技術資料や、発注者が定める設計基準・仕様書を用いて具体的な施設計画を検討する。

1.水道施設の技術的基準を定める省令とは

水道法第5条は、水道施設が備えるべき施設基準を規定している。その具体的な技術的要件を定めたものが「水道施設の技術的基準を定める省令」である。

省令は、水道法の委任に基づいて制定された法令であり、水道施設の設計・整備において遵守すべき基準である。一方、設計指針や技術マニュアルは、法令への適合を図りながら具体的な設計方法を検討するための技術資料であり、法令そのものではない。

省令の主な構成は次のとおりである。

条文主な内容
第1条一般事項
第2条取水施設
第3条貯水施設
第4条導水施設
第5条浄水施設
第6条送水施設
第7条配水施設
第8条施設の位置及び配列

2.水道施設に共通する技術的要件

2.1 安定した給水と水質の確保

省令第1条では、水道施設に共通する技術的要件を定めている。

水道施設は、水質基準に適合する必要量の浄水を、所要の水圧で連続して供給できるものでなければならない。また、水需要の変動に応じて、浄水を安定的かつ効率的に供給できることが求められる。

このため、施設能力を検討する際には、計画水量だけでなく、時間的な需要変動、施設の運転方法、供給系統の構成などを考慮する必要がある。

2.2 構造安全性と災害への対応

水道施設には、自重、水圧、土圧、地震力など、想定される荷重に対して安全な構造であることが求められる。

また、災害その他の非常時に給水への影響をできるだけ小さくし、速やかに復旧できるよう配慮する必要がある。施設の重要度や供給系統の特性に応じて、予備設備、施設の分散配置、系統の多重化なども検討する。

これらの要件は、個々の施設の安全性だけでなく、水道システム全体としての給水の確実性を確保するためのものである。

2.3 耐震性能

省令第1条では、施設の重要度に応じて、レベル1地震動及びレベル2地震動に対する耐震性能を定めている。

レベル1地震動は、施設の供用期間中に発生する可能性の高い地震動である。レベル2地震動は、施設の設置地点で想定される最大規模の強さを有する地震動である。

施設の区分によって要求される耐震性能は異なり、すべての施設に一律の基準が適用されるわけではない。また、地震動そのものへの対応に加え、液状化や側方流動などによる影響にも配慮する必要がある。

2026年10月1日施行の改正では、災害時に特に給水を確保する必要がある施設に接続する配水支管などについて、耐震性能の要求が強化された。この改正については、第6章で説明する。

3.施設別に定められた技術的要件

省令第2条から第7条では、取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設及び配水施設について、それぞれの機能に応じた技術的要件を定めている。

水道施設の取水、貯水、導水、浄水、送水、配水の各施設と、技術基準省令第2条から第7条の対応関係を示した図。第8条は施設の位置及び配列に関する基準を定めている。

3.1 取水施設・貯水施設・導水施設

取水施設には、必要な原水量を確保できることや、原水の水質、取水地点の条件に応じた構造・設備を備えることなどが求められる。河川から取水する施設では、洪水や洗掘などへの対応も重要となる。

貯水施設には、必要な貯水能力を確保するとともに、安全な構造とし、貯留中の水質悪化を防止するための措置を講じることなどが求められる。

導水施設には、必要な導水量を確保できる能力と、導水方式や管路条件に応じた設備が必要となる。施設の構成に応じて、排水設備や空気弁などの付属設備についても検討する。

3.2 浄水施設

浄水施設には、原水の水質に応じて、必要な浄水処理を行う能力が求められる。

浄水処理方法の選定に当たっては、原水の水質特性やその変動を考慮し、水質基準に適合する浄水を安定して得られることが重要となる。

また、水質の監視・測定に必要な設備や、消毒に必要な設備などについても、省令の規定に従って整備する必要がある。

3.3 送水施設・配水施設

送水施設には、必要な送水量を確保できる能力が求められる。送水方式や管路条件に応じて、負圧の発生防止、水撃作用への対応、ポンプ設備の構成などを検討する。

配水施設には、配水区域に必要な水量を供給するとともに、適切な水圧を確保できる能力が求められる。

配水管の水圧については、原則として、給水管を分岐する箇所における最小動水圧を150kPa以上、最大静水圧を740kPa以下とする基準が定められている。ただし、省令には例外規定があるため、実際の設計では適用条件を確認する必要がある。

3.4 施設の位置及び配列

省令第8条では、水道施設の位置及び配列について定めている。

施設の配置を検討する際には、維持管理の確実性や容易性、将来の増設・改造・更新の容易性、必要な水質の原水を安定して確保できることなどを考慮する必要がある。

水道施設は、建設時の条件だけでなく、長期間にわたる運転・維持管理や将来の施設更新を見据えて配置することが重要である。

4.水道施設設計指針との関係

水道施設の設計では、省令に加え、日本水道協会の『水道施設設計指針』が広く利用されている。

水道施設設計指針は、施設計画や水理計算、構造設計、設備構成などについて、具体的な考え方や設計方法を示した技術資料である。

かつては設計指針が実務上の詳細な基準として重視されてきたが、2000年に技術基準省令が制定され、水道施設が満たすべき技術的要件が法令として明確化された。

現在は、省令への適合を前提として、設計指針などを参考に具体的な設計を進める関係にある。設計指針に従っていることだけで、省令への適合が自動的に保証されるわけではない。

また、発注者が定める設計基準や仕様書は、個別の事業に適用する設計条件や要求事項を示すものである。これらは法令そのものではないが、契約条件として定められた場合には、その契約に基づく遵守が求められる。

水道法第5条第4項に基づく技術基準省令と、水道施設設計指針、発注者の設計基準・仕様書の関係を示した図。省令は法令上の要求事項、設計指針は技術資料、発注者の仕様書は個別事業の要求事項として区別している。

水道施設の設計では、法令上の要求事項と、技術的な設計方法、個別事業の契約条件を区別して整理することが重要である。

5.設計・施工・維持管理における活用

技術基準省令は、水道施設の新設や改造に際して、施設が備えるべき性能や機能を確認するための基本となる。

設計段階では、対象施設に適用される条文を確認し、必要な施設能力、構造安全性、耐震性能、衛生上の措置などを整理する。そのうえで、設計指針や発注者の仕様書などを用いて、具体的な構造や設備を決定する。

施工段階では、設計で確保すべき性能が、材料、施工方法、品質管理などを通じて実現されていることを確認する必要がある。

また、施設の改造や更新では、既存施設の状態だけでなく、工事時点で適用される技術基準や経過措置を確認することが重要である。

なお、ポンプ場の建屋や管理棟など、建築物に該当する施設では、建築基準法などの関係法令への適合も必要となる。ただし、建築物に関する規定が、管路などのすべての水道施設に一律に適用されるわけではない。

維持管理においても、省令が求める施設の機能や性能を理解しておくことは、点検、修繕、更新の優先順位を検討するうえで有用である。

6.法令改正と最新基準の確認

水道施設の技術基準は、災害の発生状況や施設の老朽化、技術の進歩などを踏まえて見直されている。

特に、全国的に水道施設の老朽化が進むなか、大規模地震などの自然災害による断水被害を軽減し、重要な給水機能を維持することが課題となっている。

2024年の能登半島地震では、水道施設や管路に被害が発生し、広い範囲で断水が長期化した。この経験から、災害時の医療活動や避難生活を支える施設への給水を確保する重要性が、改めて認識された。

こうした背景を踏まえ、2026年4月1日に技術基準省令の一部が改正され、同年10月1日に施行された。

この改正では、災害時に確実な給水を確保する必要性が高い施設に給水する給水管が分岐して設けられた配水管などについて、レベル2地震動に対する耐震性能が求められる対象に追加された。

また、配水本管を有しない水道における配水池等の扱いも含め、耐震性能が求められる施設の範囲が見直された。

水道施設の設計や更新では、最新の法令や改正内容を確認するとともに、施行日や経過措置などの適用条件にも注意する必要がある。

関連用語

参考資料

  • 水道法(昭和32年法律第177号)
  • 水道施設の技術的基準を定める省令(平成12年厚生省令第15号)
  • 国土交通省『水道施設の技術的基準を定める省令の一部改正について(重要施設に接続する配水支管等の耐震化関係)』(令和8年4月1日、国水水第521号)
  • 国土交通省『水道施設の技術的基準を定める省令の改正』(令和8年)
  • 日本水道協会『水道施設設計指針2024』
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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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