- 読み仮名
- せんかん
- 英語表記
- water main flushing
概要
洗管とは、管路内に水を流すなどして、堆積物や付着物を除去し、管外へ排出する作業である。管内洗浄とも呼ばれ、濁水発生時の対応や、供給水質を安定させるための計画的な維持管理として行われる。
特に、供給先の水量配分や供給系統を変更する場合には、管路の流速が大幅に増加したり、流向が逆転したりすることがある。こうした流況変化による濁水発生を防ぐため、運用変更前に必要な区間を洗浄することも重要な目的である。
洗管計画では、管径と流量・流速の関係を把握するとともに、管路の流況や堆積状況を踏まえて洗浄対象区間を選定する。また、洗浄時の供給条件、排水能力、周辺需要者への影響などを確認する必要がある。
1.洗管とは
送水管や配水管では、水質、管材、管内面の状態、流況などによって、管内に濁質が堆積したり、付着物が形成されたりすることがある。
これらの物質は、通常の運転状態では大きく移動しなくても、流速の増加や流向の変化によって水中に移動し、濁水の原因となる場合がある。
洗管は、こうした堆積物や付着物を除去し、濁水発生のリスクを低減するための維持管理作業である。
主な目的には、次のものがある。
- 管内に堆積した濁質や付着物の除去
- 濁水発生時の原因物質の排出
- 供給水質を維持するための計画的な洗浄
- 供給系統や水量配分の変更に備えた事前洗浄
なお、管内の水を排出して新しい水に入れ替える作業と、堆積物や付着物を除去する洗管は、必ずしも同じではない。水が入れ替わっただけでは、濁質が十分に除去されたとは限らない。
また、新設・更新管路の供用前に行う洗浄は、工事中に混入した異物の除去や衛生状態の確保を目的とする。洗浄と消毒は役割が異なり、洗浄だけで消毒が完了したとは判断しない。
本記事では、上水道・工業用水道の既設管路における洗管を中心に解説する。
2.管内堆積物と濁水発生の仕組み
管内で問題となる物質には、微細な懸濁物質、鉄・マンガン由来の物質、腐食生成物などがある。これらは管底に堆積したり、管内面に付着したりする。
流速が小さい区間では、粒子の性状によって濁質が堆積しやすくなる場合がある。ただし、堆積や付着の程度は、供給水質、管種、内面状態、過去の運転履歴などにも左右される。
弁操作、供給系統の切替、需要量の変化などによって流速が増加すると、管底の堆積物が再浮上したり、管内面の付着物が剥離したりすることがある。
水中に移動した濁質は流れに乗って運ばれ、供給先で濁水として現れる場合がある。

特に注意が必要なのは、通常時に流速が小さかった管路で、大幅な流速増加や流向の逆転が生じる場合である。
こうした区間では、それまで移動していなかった濁質が、新たな流況によって移動する可能性がある。
ただし、流速の増加や流向の逆転によって必ず濁水が発生するわけではない。濁質の堆積状況、管内面の状態、流速の大きさなどを総合的に判断する必要がある。
3.洗管の方法と特徴
洗管には、水の流れによって濁質を排出する方法のほか、空気や管内を移動する器具を利用する方法がある。
工法は、除去対象物、管径、延長、管材、管内面の状態、設備条件などに応じて選定する。
| 方法 | 特徴と適用上の注意 |
|---|---|
| 水によるフラッシング | 管内に水を流し、堆積物などを排水設備から排出する。必要な流量と排水能力を確保する。 |
| 流路を管理した一方向洗浄 | 制水弁の操作によって洗浄水の流路を設定し、対象区間に流れを集中させる。供給経路や洗浄順序を計画する。 |
| 空気を併用した洗浄 | 水と空気による流れを利用して付着物などを除去する。圧力管理、排気、使用機材の清浄性などに注意する。 |
| ピグなどを用いた洗浄 | 管内を移動する器具で付着物などを物理的に除去する。曲管、分岐、異径部、弁の通過性や回収方法を検討する。 |
水によるフラッシングは、管内の流速を増加させ、濁質を移動・排出する方法である。比較的簡単な設備で実施できる一方、強固に付着した物質まで十分に除去できるとは限らない。
一方向洗浄は、水によるフラッシングの運用方法の一つであり、洗浄済みの管路などから水を供給し、流路を管理しながら段階的に洗浄する場合に利用される。
必要な流速や設備条件は洗浄方法によって異なるため、工法ごとの適用条件を確認することが重要である。
4.洗管計画の立案
4.1 管径と洗浄流量の関係
水によるフラッシングでは、管内の濁質を洗い流すために、洗浄対象区間で十分な流速を確保する必要がある。
必要な流速は、堆積物や付着物の性状、管内面の状態、洗浄方法などによって異なる。また、流速を高めるだけで、すべての物質を除去できるわけではない。
水が管内を満たして流れる場合、流量と断面平均流速の関係は次式で表される。
Q = A × v
円形管が満管の場合、管内流積は次式で求められる。
A = π × D² ÷ 4
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| Q | 流量(m³/s) |
| A | 管内流積(m²) |
| v | 断面平均流速(m/s) |
| D | 管の内径(m) |
水道施設の実務で流量をm³/hで扱う場合は、次式となる。
Qh = 3,600 × A × v
ここで、Qhは流量(m³/h)である。
同じ平均流速を確保する場合、必要流量は管の内径の二乗に比例する。したがって、内径が2倍になれば必要流量は4倍、3倍になれば9倍となる。

この関係は、洗浄対象区間だけでなく、洗浄水を供給する周辺管路への影響を検討するうえでも重要である。
例えば、途中に分岐や合流がなく、同じ流量が流れる場合、内径100mmの管路で平均流速が1.0m/sであっても、内径200mmの管路では0.25m/s、内径400mmの管路では約0.063m/sとなる。
このように、洗浄対象区間の流速を大きくしても、供給側の大口径管路で同じように流速が増加するわけではない。
一方、実際の管網では、分岐、合流、需要者への供給などによって流量配分が変化するため、各区間の流量と流向を把握する必要がある。
また、管路延長が長くなると一般に摩擦による損失水頭が増加する。必要流量を確保できるかどうかは、供給水頭、周辺の水圧、排水設備の能力などを含めて検討する。
流速の算定には呼び径ではなく、対象管路の実際の内径を用いる。
4.2 洗浄が必要な管路区間の選定
洗管計画では、管内の堆積状況だけでなく、将来の運用変更によって流速や流向がどのように変化するかを考慮して、洗浄対象区間を選定することが重要である。
特に、供給先の水量配分変更、供給系統の切替、管路工事に伴う断水・通水などでは、通常時と異なる流況が発生する場合がある。
水量配分の変更による流況変化
複数の供給先へ水を送る管網では、供給先ごとの使用水量が変わると、各管路の流量配分も変化する。
特にループ状管網では、一部の管路で流向が逆転したり、流速が大幅に増加したりする場合がある。
例えば、供給元から2か所の供給先へ送水するループ状管網を考える。
供給先①の受水量を28.8m³/hから7.2m³/hへ減少させ、供給先②の受水量を7.2m³/hから28.8m³/hへ増加させる場合、供給元の流量は36m³/hで変わらないが、各管路の流量配分は変化する。
次の模式図では、右側縦管の流速が変更前の0.25m/s(上向き)から、変更後には0.44m/s(下向き)となり、流向が逆転するとともに流速の大きさも増加している。

このような区間では、通常時に堆積していた濁質が流況の変化によって移動し、供給先で濁水が発生するおそれがある。
なお、図中の数値は流況変化を説明するための模式例であり、特定の実管網における解析結果を示すものではない。
樹枝状管網でも、供給量の変更や系統切替によって特定区間の流速が大きく変化する場合がある。また、供給方向が変更される場合には流向の逆転も検討対象となる。
運用変更前後の比較
事前洗管を計画する場合は、管網解析などによって運用変更前後の流量・流速・流向を比較する。
特に、次のような区間に着目する。
- 通常時より流速が大幅に増加する区間
- 運用変更によって流向が逆転する区間
- 通常時に流速が小さく、濁質の堆積が懸念される区間
- 過去に濁水が発生した区間
- 濁水発生時に供給先への影響が大きい区間
ただし、流速の増加率や流向の逆転だけで、洗管の必要性を判断するものではない。
例えば、通常時の平均流速が0.01m/sから0.05m/sに増加する場合、流速は5倍となるが、その変化だけで濁質が移動するとは限らない。
このため、変更後の流速、管内の堆積状況、管種、内面状態、過去の濁水履歴、供給先への影響などを総合的に評価する。
事前洗管の実施
運用変更によって濁水発生が懸念される区間については、変更前に洗管を実施することで、供給先への影響を低減できる。
すべての管路を一律に洗浄するのではなく、流況の変化を予測し、必要性の高い区間を選定することが重要である。
また、事前洗管を行う際には、洗管作業自体によって周辺管路の流速・流向がどのように変化するかも確認する。
必要に応じて、洗浄済みの管路を供給経路として利用する方法や、制水弁の操作によって流路を限定する方法を検討する。
4.3 洗管作業と排水・バルブ操作
洗管を実施する際は、洗浄対象区間、供給経路、排水箇所、操作する制水弁を明確にする。
管路図や弁台帳と現地の状態を照合し、分岐や連絡管、弁の実際の開閉状態を確認する。
洗管中は必要な流量を確保するとともに、周辺需要者への供給水圧を維持することが重要である。
また、排水設備には、洗浄によって移動した濁質を安全に排出できる能力が必要となる。排水管だけでなく、ホース、排水ます、放流先の水路なども含めて確認する。
配水管では、消火栓を水質保全のための排水設備として利用する場合もある。ただし、洗浄に必要な排水量を確保できるかどうかは、本管の水圧、消火栓や排水ホースの条件などによって異なるため、事前に確認する必要がある。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 供給条件 | 洗浄水量、供給水頭、配水池水位、ポンプ運転、周辺の供給水圧 |
| 流路・制水弁 | 対象区間、分岐・連絡管、操作弁の識別と開閉状態 |
| 排水条件 | 排水能力、放流先、溢水・洗掘・逆流防止 |
| 周辺への影響 | 断水・減水、需要者設備への濁水流入、必要な代替供給 |
| 異常時の対応 | 水圧低下、振動・異音、濁水の拡大、排水先の異常 |
洗管では流量を確保するために弁を操作する場合があるが、急激な操作は水撃作用や圧力低下を生じさせるおそれがある。
このため、弁は定めた順序と速度で操作し、流量と水圧を確認しながら洗管を進める。
管内を排水した場合には、再充水や排気の方法もあらかじめ定めておく。
洗管終了後は、排水設備の閉止、制水弁の復旧、管路の水圧、周辺の供給状態などを確認する。
河川や海域などの公共用水域へ排水する場合は、河川管理者や関係行政機関などと事前に協議し、必要な届出・許可の有無や放流条件を確認する。排水量、放流方法、濁度などについても、排水先への影響を考慮する必要がある。
また、残留塩素を含む水道水を河川や海域へ排出すると、魚類などの水生生物に悪影響を及ぼすおそれがあるため、ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)などによる脱塩素処理を行う。脱塩素剤は排水流量や残留塩素濃度に応じて適切に注入し、処理後の残留塩素濃度を確認する。
排水を河川や水路などへ直接放流する場合は、流水の勢いによって河床や護岸、周辺地盤が洗掘されないよう注意する。排水量や放流先の状況に応じて、減勢設備の設置や適切な排水経路を検討する。
5.洗管時の濁度変化と水質確認
5.1 洗管中の濁度変化
水によるフラッシングでは、洗浄開始後に管内の堆積物が巻き上がり、排水の濁度が急激に上昇することがある。
洗浄開始後の比較的早い段階で濁度がピークに達し、濁質の排出が進むにつれて徐々に低下していく場合がある。

このような濁度の変化は、管内に堆積していた濁質が移動し、排出される過程を表している。
したがって、洗浄開始直後に排水が激しく濁ること自体は、必ずしも異常を意味するものではない。
重要なのは、洗浄流量を維持しながら、濁度の推移を確認することである。
十分な流速を維持しているにもかかわらず濁度が低下しない場合は、上流側から濁質を引き込んでいる可能性を考慮する。
この場合は、洗浄対象区間内の堆積物だけでなく、供給経路の流況や入口側の水質を確認し、上流側で濁水が発生していないか調査する必要がある。
なお、上流側からの濁質流入以外にも、対象区間内の堆積状況や流量の変動などが濁度の推移に影響する場合がある。
また、洗浄中に流量を減少させると、濁質が移動しにくくなり、排水の濁度が低下する場合もある。このため、濁度だけでなく、洗浄時の流量や流速と合わせて判断することが重要である。
5.2 洗管後の水質確認
洗管の効果は、洗浄前の水質、洗浄中の濁度変化、洗浄終了時の水質などから評価する。
排水が目視で透明になったことだけで判断せず、作業目的に応じた項目を測定する。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 濁度 | 濁質の排出状況、入口側と排水側の水質変化 |
| 色度 | 水の着色の程度とその変化 |
| 残留塩素 | 塩素消毒を行う系統での消毒効果の維持 |
| その他の項目 | 必要に応じた鉄、マンガン、臭気などの確認 |
濁度が低下しても、管内の堆積物や付着物がすべて除去されたとは限らない。
このため、洗浄時の流量・流速と水質の推移を確認し、事前に定めた判定条件に基づいて洗管の終了を判断する。
また、通常の供給状態へ復帰する際にも流況が変化するため、復旧操作中と復旧後の水質を確認する必要がある。
管内を開放した場合や外部から汚染が入ったおそれがある場合には、必要な消毒や微生物学的な検査などを検討し、通常の堆積物除去とは区別して対応する。
工業用水道では、処理方法や供給先の用途によって必要な水質管理項目が異なる。上水道の管理項目を一律に適用せず、供給条件に応じて確認する。
6.計画的な洗管と維持管理
洗管の実施記録には、対象区間、供給経路、洗浄方法、制水弁の操作状態、流量・水圧、排水総量、水質の推移などを残す。
また、濁水が発生した場合には、その位置、発生状況、流況、供給先への影響などを記録する。
これらの記録は、次回の洗管計画や運用変更時の濁水発生リスクを評価するための基礎資料となる。
洗管の実施間隔は一律に定めるのではなく、管内の堆積状況や過去の洗浄効果に応じて検討する。
また、洗管後も短期間で濁水が再発する場合には、供給水質、流況、管内面の劣化などを調査し、工法の変更や管路の修繕・更新を含めて対応を検討する。
関連用語
参考資料
- 日本水道協会『水道施設設計指針2024』第7編「配水施設」、7.5.5「管径」(p.467~468)、7.5.20「既設管内布設工法」(p.503)、7.6.3「空気弁」(p.528)、7.6.4「消火栓」(p.529~531)。
- 水道技術研究センター「Pipe Stars:洗浄作業」。
- 米国環境保護庁(EPA)「Protecting Water Quality Through Distribution System Flushing」、2022年4月。
- 四日市市上下水道局『水道管工事標準設計マニュアル』令和6年4月改訂、第7章「洗管」。
- Coliban Water「Water Mains Cleaning」。
- JICA・中里建設株式会社『インドネシア国 都市給水の水質および供給力を向上するための送配水管内洗浄案件化調査 業務完了報告書』、2020年1月。

