水撃作用

読み仮名
すいげきさよう
英語表記
Water hammer
目次

概要

水撃作用(ウォーターハンマー)とは、管路内を流れる水の速度が急激に変化することで、水圧が急激に上昇・低下する現象である。弁の急閉鎖やポンプの急停止などによって発生し、その圧力変動が波として管路内を伝わる。

水撃作用によって過大な圧力が生じると、管体や継手、弁などが損傷するおそれがある。また、圧力が著しく低下すると水柱分離が発生し、その後の再結合によって大きな圧力上昇を生じる場合もある。

水道・工業用水道の管路では、通常運転時の水圧だけでなく、ポンプや弁の操作に伴う一時的な圧力変動も考慮する必要がある。

1.水撃作用の基本原理

1.1 流速の変化と圧力上昇

管路内を流れる水には慣性があり、流れを急に止めようとしても、水はそれまでの方向へ動き続けようとする。このため、弁を急に閉めると、弁の上流側では流速が急減し、圧力が上昇する。

水は圧縮されにくい流体であるが、わずかな圧縮性を持っている。また、管壁も水圧によってわずかに変形するため、流速の変化によって生じた圧力変動が、圧力波として管路内を伝わる。

弁の急閉鎖により上流側で圧力が上昇し、圧力上昇波が上流方向へ伝わる過程を、管路内の流れと圧力分布で示した図

通常時には水が上流側から下流側へ流れているが、弁を急に閉めると、弁の上流側で圧力が上昇する。この圧力上昇は波として上流側へ伝わり、圧力波が通過した領域では流速が低下する。

ここで重要なのは、圧力波が伝わることと、水そのものが同じ速度で移動することは異なるという点である。圧力波が上流側へ進んでも、それは管内の水が一斉に逆流していることを意味しない。

1.2 圧力波の伝播と反射

圧力波は管路内を伝わり、水槽や弁、分岐部などに到達すると、その境界条件に応じて反射・透過する。反射した圧力波が管路内を往復することで、圧力の上昇と低下が繰り返される場合がある。

圧力波の伝播速度は、水の圧縮性や管壁の弾性、管種、管径、管厚などによって異なる。水撃圧の大きさは流速変化と圧力波の伝播速度に関係し、管路延長や弁の操作時間、端部の条件などによっても、その後の圧力変動の現れ方が変化する。

一般に、弁を短時間で閉鎖すると大きな圧力変動が生じやすい。ただし、圧力波が管路内を往復する時間との関係もあるため、弁の閉鎖時間だけで水撃圧の大きさを判断することはできない。

なお、圧力変化のイメージ図では原理を分かりやすく示すため、通常時の圧力を一定とし、圧力波による変化を単純化している。実際の管路では、摩擦損失や高低差などによって通常時の圧力も場所ごとに異なる。

2.水撃作用が発生する主な場面

水撃作用は、弁の開閉やポンプの起動・停止など、管路内の流速が短時間に変化する場面で発生する。特に、長い送水管路や流速の大きい管路では、圧力変動の影響に注意が必要である。

発生場面主な圧力変化
弁の急閉鎖弁の上流側で圧力が上昇する。下流側では条件によって圧力低下が生じる。
ポンプの急停止吐出側で圧力が低下し、その後の反射波や逆流などによって圧力が変動する。
ポンプの起動・停止操作流量の変化に伴って圧力が変動する。
逆止弁の急閉鎖逆流などによって弁が急に閉じると、大きな圧力変動が生じる場合がある。

2.1 ポンプ停止による圧力変動

ポンプによって送水している管路では、停電などによってポンプが急停止すると、ポンプの揚程が急速に低下する。その結果、吐出側で圧力が低下し、この圧力変化が減圧波として下流側へ伝わる。

その後、減圧波が水槽や管路の境界部などで反射すると、管路内では圧力の上昇・低下が生じる。また、送水先との水頭差などによって逆流が発生し、逆止弁の閉鎖に伴って水撃圧が生じる場合もある。

ポンプの急停止によって吐出側に圧力低下波が発生し、下流へ伝播する過程と、条件によって水柱分離が生じる状態を示した図

圧力波が未到達の領域では、まだ通常時の流れや圧力が維持されている。一方、圧力波が通過した領域では圧力が低下しており、その低下が著しい場合には水柱分離につながる。

なお、図中の圧力分布や水柱分離の発生位置は、現象を理解するための模式的な例である。実際の発生位置や圧力変化は、ポンプの特性、管路の縦断形状、送水先の水位などによって異なる。

3.水撃作用による管路・設備への影響

3.1 圧力上昇による損傷

水撃作用によって通常時より大きな水圧が生じると、管体や継手、弁、ポンプなどに過大な負荷が作用する。管路の耐圧性能を超える場合には、管体の破損や継手からの漏水などにつながるおそれがある。

また、圧力が急激に変化することで、管路や機器に振動・騒音が生じる場合もある。曲管や分岐部、弁の設置箇所などでは、水圧の変化に伴う力にも注意が必要である。

このような負荷が繰り返し作用すると、管路や設備の劣化・損傷に影響することがある。そのため、一時的な異常圧力だけでなく、繰り返される圧力変動にも注意する。

3.2 圧力低下と水柱分離

水撃作用では、圧力上昇だけでなく圧力低下も問題となる。管内が負圧になり、空気弁室が浸水している場合や管体・継手に漏水箇所がある場合には、外部の水が管内へ侵入するおそれがある。上水道では、このような外部からの水の侵入が水質汚染につながる可能性もある。

さらに、管内の局所的な絶対圧力が水の蒸気圧付近まで低下すると、蒸気空洞が形成され、水柱分離が生じる場合がある。水柱分離が発生した後、圧力が回復して蒸気空洞が消滅し、水柱が再結合すると、大きな圧力上昇につながることがある。

負圧になれば必ず水柱分離が発生するわけではない。 負圧は大気圧を基準とした圧力の状態であり、水柱分離は蒸気空洞の形成を伴う現象である。

水柱分離は、圧力低下によって水が局所的に蒸発する現象であり、キャビテーションと共通する原理を持つ。一般にキャビテーションは、ポンプ内部などで蒸気の気泡が発生・崩壊する現象も含む広い概念である。一方、水柱分離は、管路内に蒸気空洞が形成され、水柱が分断される状態を指す。

4.水撃作用の主な対策

水撃作用への対策は、流速の急変を抑える方法と、発生した圧力変動を緩和する方法に大きく分けられる。管路の条件や運転方法に応じて、適切な対策を組み合わせることが重要である。

水撃作用の対策として、弁の緩やかな開閉、フライホイールによるポンプの減速緩和、サージタンクによる圧力変動の吸収、空気弁の吸排気を比較した図

4.1 弁の操作とポンプの減速対策

弁の開閉時間を適切に設定すると、流速の急変を抑え、水撃圧を軽減できる場合がある。特に、大きな流量が流れている管路では、弁の開閉速度と管路内の圧力変動の関係を考慮する。

水撃作用を抑制するバルブ操作

管路のバルブを急激に開閉すると、管内の流速が短時間で変化し、水撃作用による圧力変動が発生する。このため、バルブ操作では流量を急激に変化させないことが基本となる。

特に注意が必要なのは、バルブの開度と流量が必ずしも比例しないことである。バルブの形式や管路条件によっては、閉鎖操作の前半では流量があまり変化せず、閉鎖終盤に流量が大きく減少する場合がある。

このような場合、バルブ全体の閉鎖時間を長くしても、最後の短時間で流れを急停止させると、大きな圧力変動が発生するおそれがある。そのため、単に操作時間を長くするだけでなく、流量が大きく変化する開度範囲での操作速度に注意する必要がある。

また、バルブの開放時にも急激な流量増加によって圧力変動が生じる場合がある。特に、空管への充水や管内に空気が残留している場合には、空気の排出状況や充水速度にも配慮しなければならない。

大口径管路や長距離送水管路では、バルブの形式、開閉特性、管路条件を踏まえて適切な操作時間を設定する。電動弁などでは、必要に応じて開閉速度の設定や水撃圧解析によって、過大な圧力変動が生じないことを確認する。

なお、緩やかな操作によって水撃作用を軽減できる場合でも、すべての圧力変動を防止できるわけではない。実際の操作は、施設ごとに定められた操作手順と水理条件に従って行う必要がある。

ポンプの起動・停止についても、設備に適した制御方法を採用することで圧力変動を抑えられる。ただし、停電による急停止では通常の停止制御が働かない場合があるため、非常時の挙動も検討する必要がある。

フライホイールは、ポンプの回転軸に回転慣性を付加する装置である。停電などによって駆動力が失われても、回転速度の低下を緩やかにすることで、流量や圧力の急激な低下を抑える効果がある。

4.2 圧力変動を緩和する設備

サージタンクは、管路に接続した水槽との間で水を出し入れすることによって、圧力変動を緩和する設備である。図3に示す大気開放型のサージタンクでは、圧力が低下すると管路へ水を供給し、圧力が上昇すると水槽へ水が流入することで圧力変動を抑える。

また、逆止弁を設け、主に圧力低下時の水の補給を目的とするワンウェイサージタンクもある。

このほか、圧縮空気の弾性を利用するエアチャンバー(圧力水槽)も、水撃作用の軽減に使用される。サージタンクとは圧力変動を緩和する仕組みが異なり、管路条件に応じて選定する。

空気弁は、管路内に滞留する空気の排出や、管内の充水・排水時などの吸排気を行う設備である。吸気機能を備えた空気弁では、負圧時に外部から空気を取り込むことで、圧力低下を緩和できる場合がある。

ただし、空気の排出や弁の閉鎖に伴って水撃圧が発生することもあるため、管路条件に応じて設置位置や吸排気能力、作動特性を検討する必要がある。

空気弁は、設置するだけで水撃作用を防止できる設備ではない。

このほか、逆止弁の閉鎖特性の検討や、管路・継手の耐圧性能の確保なども重要な対策となる。いずれの方法も、管路条件によって効果が異なるため、設備名だけで採否を判断することはできない。

5.設計・施工・運転管理上の注意点

5.1 管路設計時の確認

管路設計では、通常運転時の水圧だけでなく、水撃作用による最大圧力と最小圧力を考慮する。管種や継手を選定する際には、一時的な圧力上昇を含めて必要な耐圧性能を確保するとともに、圧力低下による水柱分離や管体の変形・損傷にも注意する。

水撃圧は、管路延長、管径、管種、縦断形状、流速、ポンプ特性、弁の開閉条件などによって変化する。そのため、長距離の送水管路や大きな流量変動が想定される管路では、必要に応じて水撃解析を行い、圧力変動と対策設備の効果を確認する。

また、管路の曲管部や弁設置部などでは、圧力変動に伴うスラスト力にも注意する。管体や継手だけでなく、支持・固定方法を含めて安全性を検討する必要がある。

5.2 施工・供用開始時の注意

新設管路や補修後の管路では、充水や空気抜きの方法にも注意が必要である。急激な充水や管内に残った空気の挙動によって、異常な圧力変動が発生する場合がある。

特に、管路の高い位置には空気が滞留しやすいため、縦断形状と空気弁の設置状況を確認する。充水時には、管路や付属設備の条件に応じた操作方法を採用し、急激な流量変化や空気の排出に伴う圧力変動を抑える。

5.3 運転・維持管理上の注意

運転管理では、ポンプの起動・停止や弁操作に伴う圧力変動を把握し、適切な操作方法を維持する。工業用水道では、需要者側の大きな流量変動や弁操作によっても、配水管路に水撃作用が生じる場合があるため注意が必要である。

また、ポンプや逆止弁、空気弁などの動作状態を点検し、異常な振動・騒音や圧力変動が発生していないか確認する。水撃作用は短時間で発生するため、通常の圧力計や記録間隔では圧力の最大値・最小値を捉えられない場合がある。

異常が疑われる場合には、運転状況や弁操作の記録を確認し、必要に応じて短時間の圧力変動を測定する。

水撃作用を防ぐためには、対策設備を設置するだけでなく、設計時に想定した運転条件を把握し、適切な操作と維持管理を継続することが重要である。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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