減圧弁

読み仮名
げんあつべん
英語表記
Pressure reducing valve
目次

概要

減圧弁は、一次側から流入する水の圧力を下げ、二次側の圧力を設定値に保つよう自動的に開度を調整する弁である。上水道や工業用水道では、配水圧力の調整や管路・設備の過大圧力防止などに使用される。

単に弁を絞って圧力損失を発生させる制水弁とは異なり、減圧弁は二次側圧力の変化を検出し、流量や一次側圧力の変動に応じて開度を調整する。ただし、設定圧力を維持できる範囲には限界があり、必要な一次側圧力や作動差圧、流量条件を満たす必要がある。

1.減圧弁の基本

1.1 減圧弁の役割

減圧弁は、管路内の圧力を適切な範囲に調整し、下流側の管路や設備を保護するために設置される。特に、高低差が大きい配水区域や高圧区域から低圧区域へ配水する場合に有効である。

減圧弁の上流側を一次側、下流側を二次側と呼び、それぞれの圧力をP1、P2で表す。減圧弁は二次側圧力P2を検出し、設定圧力に近づけるように弁の開度を自動調整する。

1.2 制水弁との違い

制水弁も開度を絞ることで圧力損失を発生させるが、通常は設定した開度を保持するため、流量が変化すると圧力損失も変化する。

一方、減圧弁は二次側圧力の変化に応じて開度を調整し、圧力を設定値に保とうとする。この自動制御機能が、制水弁との基本的な違いである。

項目特徴
制水弁主に管路の開閉・遮断に使用する。開度を固定すると、流量の変化に応じて圧力損失が変化する。
減圧弁二次側圧力を検出し、設定圧力を維持するよう自動的に開度を調整する。

また、逆止弁は逆流を防ぎ、安全弁や圧力逃し弁は所定の圧力条件で圧力を逃がすなどの役割を持つ。一般的な減圧弁に、これらの機能が必ず備わっているわけではない。

1.3 減圧できる条件

減圧弁は、一次側の圧力エネルギーを利用して流量を調整するため、一次側圧力が二次側の設定圧力より十分に高いことが必要である。

一次側圧力が低下し、必要な作動差圧を確保できなくなると、弁が大きく開いても設定圧力を維持できない。減圧弁は圧力を高める機器ではないため、一次側圧力を上回る二次側圧力をつくることはできない。

2.減圧弁の種類と構造

減圧弁は、圧力を検出して弁体を操作する方法により、主に直動式とパイロット式に分類される。どちらも二次側圧力を調整するが、弁体を動かす仕組みが異なる。

直動式減圧弁の調整ばね・ダイヤフラム・弁体と、パイロット式減圧弁の主弁・パイロット弁・制御室の構造を左右に比較した断面模式図

2.1 直動式減圧弁

直動式は、調整ばねの力と二次側圧力による力の釣合いを利用して、弁体を直接操作する方式である。一般に、調整ばね、ダイヤフラムまたはピストン、弁棒、弁体、弁座などで構成される。

二次側圧力が低下すると、ばねの力によって弁体が開く方向に作動し、流量を増加させる。反対に二次側圧力が上昇すると、圧力による力が増加して弁体が閉じる方向に作動する。

構造が比較的簡単で、補助制御機構を必要としないことが特徴である。一方、流量範囲や圧力変動に対する制御特性は製品によって異なり、使用条件に応じた選定が必要となる。

2.2 パイロット式減圧弁

パイロット式は、主弁とは別に設けたパイロット弁によって制御圧力を調整し、主弁の開度を変化させる方式である。

一般に、主弁、パイロット弁、ダイヤフラム、制御室、制御配管などで構成される。パイロット弁が二次側圧力の変化を検出し、主弁の制御室に作用する圧力を調整する。

主弁を流体圧力によって操作するため、大きな流量を扱う管路にも適用できる。一方、パイロット弁や制御配管の閉塞、ダイヤフラムの損傷などが作動に影響するため、維持管理では制御系統の点検が重要となる。

方式主な特徴
直動式ばねと二次側圧力の釣合いで弁体を直接操作する。比較的構造が簡単である。
パイロット式パイロット弁が制御圧力を調整して主弁を操作する。大流量の管路にも適用できる。

3.減圧弁の作動原理

3.1 二次側圧力の変化と弁開度

減圧弁は、二次側の使用水量や一次側圧力が変化した場合でも、二次側圧力を設定値に近づけるように作動する。

二次側の使用水量が増加すると、二次側圧力が低下するため、減圧弁は開く方向に作動して流量を増加させる。反対に使用水量が減少すると、二次側圧力が上昇するため、弁は閉じる方向に作動して流量を抑える。

このような開度調整によって圧力を制御するが、実際の応答速度や制御精度は、減圧弁の構造や流量条件、管路の特性によって異なる。

3.2 パイロット式の制御機構

パイロット式の作動原理を、横田製作所のUFSP型を例として説明する。

この方式では、パイロット弁内部で一次側圧力P1と二次側圧力P2の間の中間圧Peを形成し、主弁上面の制御室へ伝達する。Peの変化によって主弁の開度を調整し、二次側圧力を設定値に近づける仕組みである。

二次側圧力が低下した際に制御室圧力が下がって主弁が開く状態と、二次側圧力が上昇した際に主弁が絞られる状態を比較した図

二次側圧力が設定値より低下すると、パイロット弁のA弁部が閉じ、B弁部が開く。これにより中間圧Peが低下し、主弁が開く方向に作動して二次側への流量を増加させる。

一方、二次側圧力が設定値より上昇すると、A弁部が開き、B弁部が閉じる。中間圧Peが上昇することで主弁が絞られ、二次側への流量が減少する。

このように、二次側圧力の変化をパイロット弁で検出し、中間圧Peを介して主弁を操作する。なお、A・B弁部の構造や制御配管の接続方式は製品によって異なり、すべてのパイロット式減圧弁が同じ機構を採用しているわけではない。

3.3 低流量時と停止時の挙動

使用水量が少なくなると、減圧弁は開度を小さくして二次側圧力の上昇を抑える。ただし、製品の制御可能な最小流量を下回ると、圧力変動や不安定な作動が生じる場合がある。

使用水量がほぼゼロになると、減圧弁は二次側圧力の上昇を抑えるため、閉止方向に作動する。全閉時には一次側から二次側への流入を遮断して設定圧力を保持する機種もあるが、閉止性能や圧力保持特性は製品によって異なるため、選定時に確認する必要がある。

4.減圧弁の選定と設置

4.1 選定時の確認事項

減圧弁の選定では、一次側・二次側の圧力条件に加え、最大流量、通常流量、最小流量を確認する必要がある。特に、最大流量だけでなく、夜間などの低流量時にも安定して作動することが重要である。

また、減圧弁の呼び径は、必ずしも接続する管路と同じ口径にする必要はない。必要流量や圧力差、弁の流量係数、流速、制御範囲などを考慮して決定する。

確認項目選定時の主な注意点
一次側圧力最大・最小圧力を確認し、必要な作動差圧を確保する。
二次側圧力必要な供給圧力と設定可能範囲を確認する。
流量条件最大・通常・最小流量での制御性能を確認する。
弁の呼び径管径だけでなく、流量係数や許容流速から選定する。
減圧量キャビテーション、騒音、振動への影響を確認する。
制御安定性最小流量、弁容量、制御応答、下流側管路の条件などを考慮し、圧力変動やハンチングの発生を防ぐ。
異常時の安全性故障やバイパス操作によって高い一次側圧力が二次側に作用する場合を想定し、下流設備の耐圧条件や安全対策を確認する。
維持管理点検スペース、分解整備、更新時の対応を検討する。

流量係数にはCvやKvが用いられ、所定の圧力差で流せる流量を表す指標となる。ただし、減圧弁では単に流量能力を満たすだけでは不十分であり、設定圧力を安定して維持できる使用範囲をメーカー資料で確認する必要がある。

減圧弁の故障やバイパス弁の誤操作によって、一次側の高い圧力が二次側へ作用する場合がある。選定時には通常運転時の制御性能だけでなく、下流設備の耐圧条件や異常高圧への対策も確認する必要がある。

4.2 キャビテーションと圧力変動

減圧弁の内部では、流路が絞られることで局所的に流速が増加し、圧力が低下する。この局所的な絶対圧力が水の飽和蒸気圧を下回ると、キャビテーションが発生する場合がある。

キャビテーションが生じると、騒音や振動のほか、弁体や弁座などの壊食につながるおそれがある。発生の可能性は減圧量だけでなく、二次側圧力、水温、弁内部の流路形状などにも左右されるため、メーカーの選定資料に基づく確認が必要である。

対策としては、減圧量を複数段階に分ける多段減圧や、キャビテーション対策型の減圧弁の採用などがある。必要な対策は圧力条件や流量、弁内部の構造によって異なるため、メーカーの選定資料に基づいて検討する。

また、減圧弁の急激な開閉や制御の不安定さによって管路内に圧力変動が生じる場合がある。これは水撃作用に関係する現象であり、キャビテーションとは区別して評価する必要がある。

4.3 配管構成と設置条件

減圧弁の設置では、一次側と二次側に制水弁を設け、必要に応じてストレーナ、圧力計、バイパス管路などを配置する。ストレーナは異物の侵入を防ぐために設置するが、内蔵型の製品もあるため、採用機種の仕様に応じて必要性を確認する。

減圧弁の一次側・二次側に配置する制水弁、ストレーナ、圧力計と、通常閉止するバイパス弁の配管構成を示す図

一次側圧力計は、減圧弁の入口圧力を確認できる位置に設置する。ストレーナの下流側に配置すれば、ストレーナで発生する圧力損失を反映した減圧弁入口圧力を測定できる。

点検や更新時の断水を抑えるため、バイパス管路を設ける場合がある。ただし、バイパス弁を開くと、減圧されていない一次側の水が二次側へ流入し、下流設備に高い圧力が作用するおそれがある。

バイパス管路の設置では、誤操作防止措置や二次側の耐圧条件を十分に確認する必要がある。

また、必要な直管長、設置方向、排水・排気設備、点検スペースなどは採用する機種によって異なる。施工に当たっては、メーカーの施工要領に従い、凍結、浸水、腐食、配管荷重などへの対策も検討する。

5.運転・維持管理

5.1 圧力監視と設定確認

減圧弁の運転管理では、一次側圧力P1と二次側圧力P2を監視し、設定圧力に対して正常に作動していることを確認する。

圧力の確認は、通常流量時だけでなく、使用水量が増加する時間帯や低流量となる時間帯にも行うことが望ましい。流量条件と圧力変動を合わせて把握することで、制御性能の低下や異常の早期発見につながる。

また、設定圧力を変更する場合には、下流設備の必要圧力や耐圧条件を確認する必要がある。調整方法や操作範囲は製品によって異なるため、メーカーの取扱説明書に従う。

5.2 主な異常と確認事項

減圧弁の異常には、二次側圧力の上昇・低下、圧力の周期的な変動、異常音、振動などがある。原因は弁本体だけでなく、制御配管やストレーナ、一次側の供給条件にも存在する。

異常の症状主な原因・確認事項
二次側圧力が高いバイパス弁の開閉状態、設定圧力、弁体・弁座への異物噛込み、パイロット弁の不具合、圧力計の指示を確認する。
二次側圧力が低い一次側圧力の不足、流量過大、ストレーナの閉塞、制御機構の不具合を確認する。
圧力が変動する流量変動、制御応答、制御配管の閉塞、ダイヤフラムの異常などを確認する。
異常音・振動キャビテーション、過大な差圧、流速、制御の不安定さを確認する。
外部への漏水接続部、パッキン、ダイヤフラムなどの損傷を確認する。

二次側圧力が異常に高い場合には、下流設備の耐圧条件を確認し、必要に応じて安全を確保する措置を講じる。原因調査では、バイパス弁の状態や圧力計の指示を確認したうえで、弁本体や制御系統の異常を切り分ける。

パイロット式減圧弁では、特に制御配管やストレーナの閉塞が主弁の作動に影響する。異常が発生した場合には、一次側・二次側の圧力と流量を確認したうえで、制御系統を含めて原因を調査する。

5.3 定期点検と設備更新

定期点検では、圧力の制御状態、異常音、振動、外部漏水、ストレーナの閉塞などを確認する。必要に応じて弁体・弁座の摩耗、ダイヤフラムの損傷、パイロット弁の作動状態などを点検する。

分解整備を行う場合には、一次側と二次側を適切に遮断し、内部圧力を解放するなど、安全を確保したうえで作業する。具体的な分解方法、部品交換、設定調整はメーカーの維持管理要領に従う必要がある。

長期使用により制御性能が低下した場合には、部品交換や分解整備に加え、設備更新も検討する。更新時には、既存の圧力・流量条件だけでなく、将来の需要変化や維持管理性も考慮することが重要である。

6.水道・工業用水道における活用

6.1 高低差の大きい配水区域

配水池などから自然流下で配水する場合、標高が低い区域ほど静水圧が高くなることがある。高低差の大きい配水区域では、低地側の管路や設備に過大な圧力が作用するおそれがある。

このような場合、配水区域の途中に減圧弁を設置することで、下流側の圧力を適切な範囲に調整できる。高圧区域と低圧区域を分ける圧力管理の手段としても利用される。

ただし、減圧弁の下流側でも標高差や管路損失によって圧力は変化するため、減圧弁の出口圧力だけで配水区域全体の圧力を判断することはできない。設計時には、下流側の最高・最低標高や流量条件を考慮し、各地点の最大・最小圧力を確認する必要がある。

6.2 配水圧力の適正化と漏水抑制

配水圧力が必要以上に高い場合には、管路や給水設備への負担が増加し、漏水箇所からの流出量も増える傾向がある。

減圧弁によって圧力を適正化することは、漏水量の抑制や管路・設備の負担軽減に役立つ。ただし、過度に減圧すると末端の必要圧力を確保できなくなるため、配水区域全体の圧力条件を確認する必要がある。

6.3 工業用水道における供給圧力の管理

工業用水道では、浄水場や配水池から需要者へ供給する過程で、地形条件や流量変動によって管路内の圧力が変化する。特に自然流下方式では、標高差により需要者側の圧力が高くなる場合がある。

減圧弁は、需要者への供給圧力を調整し、工場内の配管や設備を過大圧力から保護するために使用される。また、需要者の使用水量が変化する場合でも、供給圧力を設定値に近づけるように作動する。

ただし、需要者の急激な流量変動や一次側圧力の大幅な低下に対して、減圧弁だけですべての圧力変動を抑制できるわけではない。配水系統全体の圧力条件や流量変動を考慮して設置・運用する必要がある。

関連用語

参考資料

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この記事を書いた人

ふるさん
みずみちノートの執筆者・案内役

水道施設に古くから関わっている「古株」のフクロウ。上水道・工業用水道の技術を、基礎から現場での実務までわかりやすく案内します。

技術監修: 技術士(上下水道部門)

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